水面香美 〜ミナモカガミ〜

 今日から12月24,25日に行われるクリスマスライブと1月1日に行われる新春ライブに向けた練習が本格的に始まり、レッスンルームは多くのアイドルたちで賑わっていた。


「水面さん、今お時間よろしいでしょうか?」


 アイドルが忙しいという事は、アイドルを取り仕切っているプロデューサーはその何十倍も忙しく、私たち真矢プロジェクトのプロデューサーは今から2ヶ月以上も先のスケジュールを分単位で調節するために担当アイドル1人1人と面談を行っていました。


「お疲れ様です。プロデューサー」


「お気遣いありがとうございます。では、水面さんの今後のスケジュールについてですが……」


 プロデューサーはスケジュールを伝え終えると、自分のスケジュール帳を机の上に伏せて置き、言いました。


「これは個人的な提案なのですが、水面さん、11月から期限付きで女子寮に入寮しませんか?」


「え?」


「と言うのも、スケジュールを考えるとこれからの時期は水面さんのご実家から事務所に通われるよりはしばらくの間は女子寮で過ごした方が水面さんの精神面や身体面で楽になるのではないかと思いまして」


「確かに、学校から事務所に来て遅い時間に電車で実家に帰るよりは女子寮の方が事務所も学校も近いですから出来るならそうした方が良いですよね」


「ちなみに事前にご両親とはお話しさせて頂きまして、お父様もお母様も自分たちが決めることでは無いので水面さんにお任せすると仰っていました」


 いつの間にそんな事をしていたのか仕事の早いプロデューサーに私はこう答えました。


「プロデューサーや皆に迷惑はかけたくないのでしばらくの間、女子寮にお邪魔しようと思います」


「分かりました。申請の方は私の方で行いますが、詳しい話はまた後日という事でよろしいでしょうか?」


「はい、大丈夫です」


「それでは面談は以上です。お疲れ様でした」


「お疲れ様でした。失礼します」

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