四万十幸子 〜シマントユキコ〜

 料理というのはあまり得意ではない。


家ではお母さんが全て作ってくれるし、手伝おうとしても、


「あんたは下手くそなんだからじっとしてて」


 と言われて台所にすら立たせてはもらえない。


 かと言って何も作れないという訳ではなく、それなりの物は作れるはず。


 そう思っていた。


「収録前に練習をしておいて良かったですね」


 マネージャーさんは私の作った料理を見てそう言った。顔を引きつらせながら……。


「料理の味に関しては可もなく不可もない丁度良い味ですが、見た目は改善する必要がありますね」


 私はなんて事のないごく普通の盛り付けだと思っていたのだが、真矢プロジェクトの皆にグループメールで画像を送ってみると『混沌』や『地獄』『終末』といったタイトルを付けられて返ってきた。


「収録日まではもう少し時間があるので私と一緒に盛り付けを学びましょう」


 マネージャーさんのその言葉にはとても深刻そうな雰囲気があった。


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