小暮未可子 〜コグレミカコ〜

 役者という仕事を始めてから私は人を観察するクセが付き始めました。


 中でも川野プロジェクトの『一人和水プロダクション』こと島村優姫ちゃんに関してはかれこれ2年近く観察している女の子でした。


「あっ! 未可子さん。お疲れ様です」


「優姫ちゃんお疲れ。今日はこれからボイスレッスンだったよね?」


 私は観察を始めてから2週間程で優姫ちゃんと仲良くなり、今では本人同意の上で観察させて貰ったり、大人気でもうすぐ第2弾が発売になるカバーアルバムのレコーディングに見学、そしてこっそり参加させて貰ったりしてより近くでより細かく観察できるようになりました。


「未可子さんもこれから別館でお仕事でしたよね?」


「最近は優姫ちゃんのおかげでドラマの仕事が増えて観察の時間が減って大変だよ」


「それは言い事じゃないですか」


「まぁ、そうだけどね」


「小暮さん」


 優姫ちゃんともう少しお話をしようと思っていると少し前を歩いていたマネージャーさんが私を呼びました。


「引き留めてすいませんでした。お仕事頑張ってください」


「うん、頑張る。優姫ちゃんもレッスン頑張って」


「はい。後で、メールします」


 優姫ちゃんと別れてマネージャーさんのもとに駆け寄るとマネージャーさんは不思議そうにこう聞いてきました。


「何故先ほどのお2人は小暮さんが島村さんの声で、島村さんが小暮さんの声でお話をなされていたのでしょうか?」


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