海藤涼花 〜カイドウスズカ〜

 妖真暮先輩がパーソナリティーを務めるラジオ番組『アヤシイラジオ』その名の通りアヤシイ雰囲気が人気となっているこの番組にわたしはこの日、ゲストとして呼ばれた。


「ボクの話はこれくらいにして今週のゲストに来てもらおう」


 真暮先輩の話が終わってから一呼吸置いてわたしは口を開いた。


「こっ、ここ、こんにゃちは。きゃい藤しゅじゅきゃ、ですぅ」


 噛んだ。しかも盛大に。


「カ、カット。ここはカットで撮り直しさせてください」


「残念だけどこの番組のスタッフはこのままの音声を流すよ。事務所NGが出ない限りね」


 しかし、マネージャーさんはNGを出してはくれなかった。


「残念だったね。今週はそんな可愛い後輩、海藤涼花ちゃんとお送りしよう。涼花ちゃん、わずかな時間だけどよろしく」


「はい、よろしくお願いします」


 わたしは気持ちを切り替えるつもりでそう言ったが、緊張で最後まで嚙みまくりだった。

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