小野原聖奈 〜オノハラセナ〜

 夏休みも残り2日となったこの日、アタシは和水プロダクションが半日貸し切ったファミリーレストランに来ていた。


「なぁ、マネージャー。ネット配信のドラマの打ち上げでこんなに金を使って良いのかよ」


「私もその事に関しては小野原さんと同意見ですが、上の判断ですので小野原さんはお気になさらずに楽しんでください」


 アタシはマネージャーとドリンクバーのグラスだけを持って店内を無意味にうろついて、共演者やスタッフと雑談を楽しんだ。


「小野原さん」


 打ち上げ帰りにマネージャーが寮まで送ってくれると言ったからその言葉に甘えて車に乗り込むとマネージャーは不意にアタシの名字を呼んだ。


「何?」


「今日は楽しめましたか?」


「まぁ、それなりに」


「それなら良かったです。最近の小野原さんは退屈そうにしていたので」


 そんな所を見られていたことに驚いたが、アタシはいつも多忙なマネージャーがちゃんとアタシを見ていてくれた事がとても嬉しかった。

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