柳井九太郎 〜ヤナイキュウタロウ〜



 夏フェスまで残り1週間となったこの日、アイドルたちは夏フェスの会場で本番同様のリハーサルが行われていた。


「はい『No.ナンバー』のリハ終わりっと」


 ステージを降りた柳井九太郎は鼻歌交じりにそう言い、楽屋へ戻った。


「あ、お疲れ様です」


 九太郎が楽屋に戻ると、その声と共に見覚えのある簡易小屋が現在進行形で建てられていた。


「もしかしなくても、紗香ちゃんだよね?」


 そう言った九太郎の目には粉塵が目に入らないようにゴーグルを付け、職人のように真剣な目つきで小屋を建てる鷲尾紗香が映った。


「そうです。あの、お兄じゃなくてプロデューサーに許可は貰ったので楽屋の一角をお借りします」


「そうなんだ。別に毎年の事だから気にしないけどさ」


 九太郎はそれ以上紗香のアイドルよりも真剣な建築活動に踏み込むことはせず、他のユニット活動で留守にしているメンバーの帰りを待ちながら簡易小屋の完成を見守った。

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