八乙女緑 〜ヤオトメミドリ〜

「ふぃ~ 疲れた」


 夏フェスで川野プロジェクトのメンバー全員で歌う『カワノナガレ』の全体練習を終えると全体をまとめていた土居侑がレッスンルームの床に寝転がりそう呟いた。


「侑くんお疲れ様」


「緑さんお疲れ様です。大人組の方をまとめてくれてありがとうございます。人数が多いので助かりました」


「問題児の相手で手一杯になっているみたいだったから」


 緑はその問題児の名前は挙げなかったがその視線はレッスンルームに無断で張られている『rainbow』のポスターに向いていた。


「やる時はやってくれるんですけどね」


「まぁ、彼女を扱うのは大変だから」


「そ~、そ~、さいちゃんを扱うには特殊さいちゃん免許が必要なんだよね~」


 練習が終わると一目散に帰って行ったはずの烏居彩香がいつものように突然話に割り込んできた。


「さいちゃん、何か忘れもの?」


「ん~常識? ってそうじゃなくて~ プロプロちゃんが『ナンバーズ』の打ち合わせだって~」


「『ナンバーズ』じゃなくて『No.ナンバー』なんだけど、わざわざ教えに来てくれてありがとう」


「いえいえ~」


 彩香はそう言うとトタタタタと跳ねるような足音を立ててレッスンルームから出て行った。


「特殊さいちゃん免許……プロデューサーに相談して取ってみようかな」


「いや、侑くんあれは冗談だからね」

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