千葉拓斗 〜チバタクト〜



「と言う訳で頼んだ」


 朝早くから川野流に呼び出された千葉拓斗は流に昨晩の出来事を事細かに説明され、本日付で和水プロダクション川野プロジェクト所属のアイドルになった竹林聖火の教育係に半強制的に任命された。


「で、僕が君の教育係になった訳だけど、名前は確か聖火くんだったよね?」


「そうです」


「そんなに緊張しなくていいよ。教育係と言っても僕が教えてあげられるのはアイドルの心得とこの事務所の案内くらいだから」


「よろしくお願いします」


 流の話だけを聞くと素行不良の少年と言うイメージであった聖火がきちんとした礼儀を心得ていることに驚いたのと同時に自分の意思で始めた訳ではないというアイドル活動に乗り気ではない雰囲気を拓斗はどことなく感じ取っていた。


「これは僕の経験談だけど、アイドル活動でも勉強でも最初の内は分からないことだらけでやる気が起きないし辞めたくなるけど、諦めなければきっと良い結果に繋がる。流はきっと聖火くんを嫌って程支えてくれる。もちろん、僕も教育係として聖火くんを支えていくつもりだ」


「どうして言い切れるんですか?」


「僕も、聖火くんと同じように流にスカウトされたから」


拓斗はそう言って笑顔を見せると聞かれた訳でもないのに自分がアイドルとして今のように普通に笑うことが出来るようになった経緯を語った。

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