流浪三保 〜ルロウミホ〜

「何故私がこんな事を」


土曜夜のプロジェクトルームではその部屋を取り仕切る川野流とその部屋で事務員として働いている人、十数名が書類とにらめっこをしていた。


偶然居合わせた流浪三保も無理矢理そのにらめっこに参加させられ、面倒臭そうにそう言った。


「三保は元々事務員志望で入ってきたんだから戦力くらいにはなるだろ? これだけ居ても手が足りていないくらいなんだ。手伝ってくれ」


「元々の話だろ。でも、今の私はアイドルなんだよ。ア・イ・ド・ル」


「わかった、わかった。『フ☆レ☆ン☆ド』みたいに言わなくていいからさっさと手を動かしてくれ」


三保は流に軽くあしらわれて嫌々ながらもしっかりと止まってしまっていた手を動かした。


「ねぇ、プロデューサー」


「何だ? 休憩ならわざわざ許可取らなくて良いから勝手にしてくれ。でもすぐ戻れよ」


「そうじゃなくて、さっきから言われるがままに手伝ってるけど私は一体何をしてるの?」


「来週行われる最終オーディション用の書類整理とかプロジェクトのメンバー関連のスケジュール管理とか色々だ。あとは、他のプロジェクトから押し付けられた仕事だな」


「私もだけど嫌々引き受けるなんて本当にお人好しだよ」


そう思った三保だったが、人前で流を褒めるのは嫌だったのか、その言葉は心の中に留めておいた。

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