天王寺真 〜テンノウジマコト〜
「川野、川野は何処にいますの?」
お嬢様言葉を喋り、事実お嬢様である天王寺真は自身の年齢15歳の平均身長より10センチ小さい身体で事務所内を駆け巡っていた。
「騒がしいと思ったら真か。ふはぁぁ、俺の眠りを妨げてまで何の用だ?」
真の声を聞いて仮眠室から出て来た川野流は欠伸をしながら真に聞いた。
「聞いてくださいまし。先程、私は鈴乃木に髪の量を整えてもらっていましたの。でも……これをご覧になって」
真は被っていたお気に入りの麦わら帽子を脱いだ。
いつもならば真の長く艶やかな黒髪が腰の辺りまで垂れ下がってくるのだが、麦わら帽子から垂れ下がってきた髪は首の辺りまでで短くなってしまっていた。
「アイドル……いいえ、女性にとって髪は命と言っても過言ではありませんわ。こんな事になるのなら鈴乃木ではなく専属の美容師にに頼むべきてしたわ」
辛うじて真の癖である髪を耳の上にかける動作をする事は出来たが、髪の量が極端に減っている為物足りなさがあった。
「真の長髪は性格にあった良いインパクトだったからな。でも、幸い真は今年度に入ってまだ一度も仕事が入っていなかったしイメージチェンジだと言えばファンも納得するだろう」
「なるほど、それは名案ですわね。4月に入ってから今日まで一度も私に仕事を持って来なかった川野に感謝をしなくてはいけませんわね」
「その事は本当に悪かったと思っている。俺も新年度に入ってからなにかと忙しかったんだ」
「まぁ、今回は川野の名案に免じて許してさしあげますわ」
「はいはい、ありがとう存じます」
流は適当にあしらうと、真の付き人で川野プロジェクトのアイドルの1人でもある鈴乃木小鉄を説教する為、気だるそうに小鉄を探しに向かった。
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