露木色 〜ツユキシキ〜

世間ではゴールデンウィークと呼ばれている最大10連休にもなる長期休暇だが、休みが不定期なアイドルにはほとんど関係の無い事であった。


「露木! また同じ所で間違えてるぞ」


和水プロダクションのレッスンルームからダンスレッスン担当トレーナーの怒鳴り声が漏れ出していた。


「うぅぇぇ、すいません」


ゴールデンウィーク最初の3連休が運良く休みであった露木色はその3連休を利用して個人的に自分が最も苦手なダンスレッスンをしていた。


「全く。自ら苦手な事を克服するのは良いが色のダンスに関しては1人でなんとかなるレベルでは無いだろう?」


「はいぃ」


「ほら、休憩は終わりだ。さっき教えた所を最初からやってみろ」


色はトレーナーに教わった通りに物覚えの悪い身体を動かした。


「はうぅ、どぉでしたか?」


「細かなミスが目立ってはいたが、まぁギリギリ合格点と言った所だな。だが、練習は怠るなよ」


「はいぃ、わかりました」


色に一応合格点を与えたトレーナーは次のレッスンが控えている為、レッスンルームを出て行った。



「お疲れ様です」


「あぁ、本当に疲れたよ。川野」


「色の様子はどうですか?」


「素人にしては上出来だ。まぁ、プロとしてはまだまだだがな」


「厳しいな」


「当たり前だ。色たちは人に観てもらう仕事だからな」


トレーナーはそう言うと別のレッスンルームへと向かって行った。

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