上原季楽 〜ウエハラキラ〜

「きらく」


「おや、川野マネージャーではないですか。と、私の名前は『き・ら・く』ではなく『き・ら』ですよ」


「で、きらく。レッスンは終わったのか?」


「ですから、『き・ら・く』ではなく……。まあ、今は良いです。今はレッスンの休憩時間中ですが、何かご用ですか?」


流がワザと名前を間違えて季楽がそれを訂正するいつも通りのやり取りを済ませ、二人は本題へと入った。


「あまり時間は取らないから簡単かつ簡潔に答えて欲しいのだが、黒い色は好きか?」


「黒? あまり川野マネージャーがお仕事の衣装で用意してくださることはない色ですね。でも、事務所で見ているからわかると思いますけどプライベートではよく着ているほど黒は好みですよ」


「言われてみれば確かにそうだったな。こんな質問に時間を取らせて悪かった。それじゃあ、この後のレッスンも頑張ってくれ」


流は季楽にそう告げると懐から取り出したメモ帳に季楽が黒い色が好みであるという情報を記入しながらプロジェクトルームに戻っていった。



「今の質問の意図はなんだったのでしょう?」


季楽が質問の意図を知るのはもう少し先の話である。

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