一条心愛 〜イチジョウココア〜
「お待たせしました」
プロデューサー兼マネージャーの川野流にそのように挨拶した小さいながらも中学2年生の少女、一条心愛は黒いドレスというクールな衣服を身に纏いながらもキュートな姿をしていた。
「着心地はどうだ? と言ってもその服を着るのはこの仕事が最初で最後だがな」
「動きやすいですし、格好良いですし、今回だけは勿体無いと思います」
「気に入ってくれたのなら良かった。今度結成するユニットも同じような衣装にする予定だったんだ」
「ユニット、ですか?」
流は顔を引きつらせながらも自分は何も言っていないと誤魔化していたが、心愛にはお見通しだった。
「ユニットって?」
「まだ正式なメンバーは決まっていないが、心愛を中心としたクールなユニットを考えている。これは誰にも言うなよ」
心愛はまだ正式に発表されていない事をペラペラと喋るような娘ではない事はプロデューサー兼マネージャーである流が一番知っていたが、念の為に釘を刺した。
「私を中心としたユニット……」
心愛の頭の中では共にレッスンをしている仲間でありライバル達とユニットとして同じ舞台で踊り歌っている想像が溢れてきた。
「心愛は誰と組みたいとか、希望はあるか?」
流はそう尋ねたが、想像に勤しんでいる心愛にその声は届いていなかった。
「心愛、良いユニットをプロデュースしてやるからな」
やはりその声は心愛に届いていなかった。
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