新川咲 〜アラカワサキ〜

「新川咲、中学校を卒業しました」


卒業式を終えたばかりのその足で事務所へやって来た咲は自信が所属するプロジェクトルームで受け取ったばかりの卒業証書を高々と掲げた。


その可愛らしい行動を見た同じプロジェクトルームで活動しているアイドルや事務員は咲に拍手を送ったが、咲が最も拍手をして祝って貰いたかった相手はそこには居なかった。


「琴ねーさん、プロデューサーさんは?」


「さっきまでこの部屋で仕事していたと思うけど。誰か見てない?」


琴音は部屋にいた他のアイドル達にそう聞いてみたが誰一人として咲が部屋に入って来てから咲が探しているプロデューサー兼マネージャーの川野流を見ていないと答えた。


「プロデューサーさん……」


「そんな悲しい顔をしないの、すぐに見つかるはずだから」


「琴音の言う通りだ。折角の可愛い顔が台無しだぞ。何を探しているのかわからないが」


琴音の言葉に賛同したのは咲が探していた流だった。


「あ、そうだ。咲、卒業おめでとう。ささやかだけどケーキを用意したからみんなで食べよう」


そう言った流の両手には買ってきたばかりのケーキ屋の箱が収まっていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る