第12話

最後に、その後の俺やみんなのことを話しておこう。

俺と佳奈は、その2年後には長女が生まれた。

俺たちが生活して行くうえで、まったく苦労が無かったと言えば嘘になる。そりゃ多少の苦労はあったさ。だけど、俺と佳奈の2人で、一つずつ乗り越えて来たよ。息子ができてからは3人、娘ができてからは4人でね。

これからもいろんな苦労があると思うけど、4人で乗り越えて行くよ。息子や娘が佳奈の耳になってくれるし、俺の両親や佳奈の実家も、なにかにつけて協力してくれるからね。


清川先輩はさらにその2年後、今から言うと2年前に結婚して、今年、子供が生まれる。相手は、俺と佳奈の披露宴の二次会で知り合った人で、佳奈の友達の一人だ。先輩にしちゃ、ちょっと時間がかかったけど、まあノーサイド直前の逆転トライってとこかな。清川先輩との腐れ縁は、きっと一生続くんだろうな。その方が俺はうれしいけどね。


佳奈の妹の美奈はまだ独身だ。佳奈のお父さんはきっと、美奈の結婚にも大反対するだろうな。そのときのお義父さんの顔が今から目に浮かぶ。でもそのときのために、最終兵器を用意している。俺の息子だ。なにしろお義父さんにとって、俺の息子はこの世でもっとも怒らせたくない相手だからな。

そのときのために、俺と佳奈と美奈と息子・娘の5人で、たまに予行演習をしている。なぜなら、美奈にも大切な人がいて、そのときがもう近いからだ。

美奈がお義父さん役の俺に結婚相手を紹介して結婚の了解を求め、お義父さんである俺が猛反対する。議論が膠着したときに、俺の息子がとことこ出て来て、お義父さんを説得する。落ち込んだお義父さんを、俺の2歳の娘がまだよく回らない口で慰める、っていうシナリオだ。

美奈に言わせると、俺が演じるお義父さん役が、実にはまり役らしい。美奈の笑いが止まらなくなっちゃって、予行演習にならないときがあるんだ。


これで最後だから、もう少し辛抱してつきあってくれ。

実は今日、俺の息子の小学校の入学式だったんだ。

それを記念して、って言うわけでもないんだけど、昔のことを思い出したんで、文章に残しておこうと思ったんだ。

こんな俺の長い話に最後まで付き合ってくれて、ありがとうな。

人生、いろんなことがある。いやなことや悪いことがあって、落ち込んでも、きっとまた良いことがあるさ。どんなにろくでもない自分でも、きっとどこかに自分を待っていてくれる人や、自分のことを大切に思っていてくれる人がいる。そんな人のために、立ち直らなきゃいけない。

それに、いやなことや悪いことは大抵、自分の周りからやって来るように見える。だけど、そうじゃないんだ。本当は、周りからやって来るんじゃなくて、自分の中からやって来るんだ。

だって、他人には自分を傷つける力なんて無いから。

自分を傷付けることができるのは、自分だけなんだから。

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SECOND HALF sirius2014 @sirius2014

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