第10話
俺の両親のところにも佳奈を連れて行った。親父もお袋も、佳奈を歓迎してくれた。両親はどうやら、一人息子の俺が、一生独身になってしまうんじゃないかと、心配していたみたいだ。
そして俺は佳奈と結婚の準備を進めた。
結婚式はチャペルでやるのが佳奈の希望だったから、俺は自分の出身大学での披露宴を提案した。俺の出身大学はミッション系で、キャンパスの中に、天井が高くて蔦に覆われた立派なチャペルがあるし、大学のグリークラブがアルバイトで聖歌隊をやってくれる。そこで式を挙げて、傍のゲストハウスで披露宴を開くのはどうかと提案した。費用面でも比較的安く上がるし。
佳奈は賛成してくれたが、問題はこのチャペル、結構人気があって、かなり先まで予約で埋まっていることだった。だからたまたま半年ほど先にキャンセルが出たのはラッキーだった。
結婚式の2ヶ月前が、カナの三回忌だった。もうあれから2年経ったんだ。
佳奈に三回忌のことを話し、一緒に参加しないかと尋ねたところ、ぜひ参加したいと言った。
俺は清川先輩に結婚が決まったことを告げ、佳奈を三回忌に連れて行ってもいいかどうか、ご両親に確認して欲しいとお願いした。清川先輩は、確認するまでもない、俺も挨拶したいから絶対に連れて来い、と言った。
三回忌の当日、俺と両親はいったん車に佳奈を残して、3人で降りた。念のため、カナの両親にもう一度了解をもらった方が良いと思ったんだ。
先に到着して待っていたカナの両親は、清川先輩からこのことを聞いていて、ぜひご挨拶したいと言った。俺はその場に両親を残して、車まで佳奈を迎えに戻った。
佳奈を連れて来て、カナの両親と清川先輩に佳奈を引き合わせると、3人とも目を見開いて驚いていた。
そりゃそうだろう。見慣れないと、ホント、佳奈はカナに似てるんだよ。
佳奈を見ているうち、カナのお母さんが泣き出してしまった。
「あんまり似ているので、加奈子のこと思い出してしまって、申し訳ありません。」
カナのお母さんはそう言って、ハンカチで目を拭った。
「それに、佳奈さんには失礼な言い方かも知れないけれど、賢太郎さんが加奈子によく似た人を選んでくれて、うれしいんです。」
カナのお母さんはそう言って、何度も目を拭った。
「賢太郎のセカンドハーフがいよいよ始まるんだな。」
清川先輩が珍しくくそ真面目な顔でそう言った。田舎のスポーツ少年をそのまま大人にしたみたいな、ジャガイモ系の風貌の清川先輩が言うと、なんだかおかしかった。
「先輩も早くキックオフのホイッスルを聞かせて下さいよ。佳奈は読唇術が得意だけど、先輩が得意なのは、独身術じゃないですか。」
俺がそう切り返すと、先輩は、バカヤロウ、俺だってもう5センチ身長があればな、って言って俺にタックルをかました。
相変わらずバインドの利いた、良いタックルだった。
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