第37話ともしび大賞

関西演芸しゃべくり話芸大賞の審査員奨励賞を受賞して、さらに数ヶ月後。


僕に知人から連絡が入る。

「お仕事の話です。お電話頂けますか?」


なんだろうかな?

と、思って連絡しなおしてみると、

僕が、大阪ともしび大賞という、賞を受賞したらしいのだ!


と、言っても、僕自身そんな賞を見たことも、聞いた事もない。


大阪ともしび大賞とは、大阪日日新聞のコラムを書いている人が、年に一回、大阪で頑張っている芸人さんに賞を与えて、もちろんそれが大阪日日新聞に掲載されるのである。


寝耳に水な話し。

どこでどうなって、僕が、その賞を受賞したのか?

詳しい経緯を聞いてみた。


その大阪日日新聞でコラムを書いている人は、

なんと、関西演芸しゃべくり話芸大賞の審査員の1人の方だったのだ。


おそらく、その方が評価してくれたおかげで、しゃべくり話芸大賞でも審査員奨励賞を頂いたのだろう。


さらに、その方は僕の事を調べてくれたようで。


結婚しながら、二児の父親をしながら芸人している。

会社員しながら芸人している。

それに共感して頂いたのだ。


大阪の某所で、そのコラムを書いている方とお会いした。

しっかりと、握手を交わした後、

「予選で原田さんを見てましたよ!一番面白かった!」

と、絶賛して頂いた。


「大阪でね、頑張ってお笑い芸人やってる、売れてないけど面白い方に、僕が、独断と偏見で賞をあげる事にしました。それが大阪ともしび大賞です!」


話を聞いているうちに、ほとんど、僕主体でその賞ができたような気がしてきた。


「第1回大阪ともしび大賞は、原田さんです!」


まさに夢のような話だった。

あの大会の予選の、1人の審査員の方が、僕のネタを見て笑い、

それが、きっかけになって、

大阪ともしび大賞という、賞すら作りあげてしまったのだ。


「ありがとうございます!」


僕は何度も感謝の言葉を言った。


「残念ながら、賞金もなんもないですけどね。」


「全然かまわないです!」


「大阪日日新聞に掲載させてもらいます。来年からは違う芸人さんを一年に1人ずつ、表彰していきます。」


栄えある、大阪ともしび大賞、第1回の受賞者は僕だ。

でも、明らかに僕のために作って頂いた賞のようだった。


第1回大阪ともしび大賞受賞の記事は、その月の大阪日日新聞にきちん掲載された。

僕の顔写真付きで。


あろうことか、一年で2つの賞を頂いたのだ。


こんなにありがたい事はない。


そして、辞めなくてよかった。

続けていたら、僕の為に、一つの賞が出来上がってしまったではないか!


今までは、どこか出来上がったものに、自分がねじ込んでもらうのに必死だった。


こんな僕でも、


こんな僕でも、


何かを作り上げる事、できるんだ!


やはり、継続は力なり。


どこで誰が見てくれているか、わからない。


そんな素晴らしい、大阪ともしび大賞受賞だった・・・・

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