第36話大会

所属事務所のない僕だったが、色んな方のつてで、いろんな仕事やコンテストのお話などはもらっていた。


ある日、関西演芸しゃべくり話芸大賞というコンテストの予選のお話を頂いた。


しゃべくり一本の大会で、これもたくさんの応募があるという。

事務所の所属の人間しか出れないというコンテストだったが、これも色んな方のご協力で予選に出れる事になった。


出場者が多数のため、2日間にわけて予選が開催された。

初めての出場のため、右も左もわからない状況だったが、とにかくしゃべくり一本で予選に参加させてもらった。


そして、一週間以上たって、

家に大きめの封筒が届いた。


開けてみると、表彰状が入っていた。

そこには、こう書かれていた。


「審査員奨励賞」


なんだ、これは?

そしてその表彰状を読んでみた。


「残念ながら、あなたは


本戦出場には、あと一歩のところでした。


それでも、その技術、その話芸を評価し、


審査員から特別に、奨励賞を贈ります。」


読んでいて、複雑な気持ちになったが、

とにかく、本戦には、あと一歩で進めなかったけど、

審査員奨励賞を頂いた。ということ。


さっそく妻に見せてみた。


「すごいやん!」


息子たちにも見せてみた。


「わーい!ひょうしょうじょうだ!」


長男が手に持って走り回る。


当時にして、芸歴二十年を迎えていた。

芸歴二十年にして、初めて頂いた、賞。

関西演芸しゃべくり話芸大賞の審査員奨励賞。


あと一歩で本戦だったというのが、

僕らしい賞だったが・・・・


とにかく、生まれて初めて頂いた、

賞らしい賞。


事務所という後ろ盾もなく、本当に裸一貫でやってきて、やっと少し評価された。


この賞で何か他に貰えるわけじゃない。

仕事が増えるわけじゃない。


それでも、


それでも、


死ぬほど嬉しかった。


そして、やはり、


辞めちゃいけない!


そう思った。


表彰状を家に飾り、家宝にした。

これから、子供達もどんどん大きくなっていく。

テレビに出たりそんな結果は残せないかもしれないが。


俺は、辞めちゃいけない!


強く、そう思った。


一般人になったとこで、こんな賞、もらえるわけがない。


継続は、力なり!


その継続こそ、辛く苦しいのだが。

続けていけば、必ず、何かある!


その何かのために、俺は生きていく!


そう、心に決めた出来事だった・・・

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