第34話誕生

二人目の赤ちゃんの出産が近づいてきた。


おなかの中のエコーの写真で、赤ちゃんが真正面を向いていたことが多く、

モノがはっきり写っており、出産前から男の子であることがほぼ判明していた。


一人目も男の子、二人目も男の子。

「女の子が産まれたら、髪の毛とか結んであげたいな。」

とか言っていた妻の要望は叶えられなかった。

しかし、一人目の来ていた服を、ほぼほぼ着させることができ、

家計的には非常に助かった。


長男も「赤ちゃん、いつ来てくれるの?」

などと言って、妻のおなかをさすっては、弟の誕生を楽しみにしていた。


出産予定日が近づき、妻に出産の兆候が表れたので、すぐ近所の産婦人科に入院した。

しかし入院したと同時に兆候がぴたっと収まってしまった。


仕方ないので、妊娠を誘発するため、僕と妻でそこの産婦人科の階段を上ったり下りたりして運動を繰り返した。

僕が疲れてしまったら、長男に代わってもらった。

その間の時間はなんというか、

新しい家族を迎え入れるための、とても緩やかで微笑ましいひと時だった。


妻が5日間の入院の末、結局一時退院することになった。


その日は偶然にも・・・


長男の幼稚園の卒園式の日だった。

なんというか、

妻を卒園式に出席させるために、弟が出てくるのを少しためらったようだった。

本当によくできた弟だ。


長男の卒園式も無事に終わり、速攻で妻に再び出産の兆候がきた。

朝イチですぐ妻を産婦人科に連れて行き、僕は一度会社に出社をし、家から

妻の着替えを持って、昼過ぎに妻の病室を訪れたとき、


病室に、妻がいない!!!


しかも、妻のスリッパがおいてある??

これは??


すぐさま分娩室へ行くと、外でお医者さんが手を洗っている。


その部屋の中のカプセルのようなベッドに、

小さな赤ちゃんがすでに眠っている。


お医者さんは答えた。

「原田さんですね。すぐに産まれましたよ。男の子です。」


はやっ!!!!


またまたびっくりするほどの安産で、妻は二人目を出産した。


分娩室に入ると妻が、うつろな目で僕を見ていた。


僕は少し目を潤ませながら、

「よく頑張ったな!」

と声をかけた。


しっかりと妻の手を握り、大きくなった長男も妻の手を握った。

また新しい家族が増えた。その喜び。

これほどの喜びとは。

本当に想像できなかった。


これが家族なんやな。

それを教えてくれて。


ありがとう。

妻よ。

・・・何にも心配いらないから。


・・・ゆっくり休んでください。


妻は微笑みながら、麻酔が効いているのか、またすぐに眠った。

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