第24話和解

家に帰ると、妻が息子を抱っこして、心配で待ち構えていた。


「大丈夫なん?」


思わず、妻の顔を見ると抱きしめてしまった。


「・・・ちょっと!痛い!」


つい、強く抱きしめすぎてしまった。(^^;)


「ごめんな、巻き込んで。びっくりしたやろ?」


「まあ、・・・そんな事になっているやろなー。とは、思ってたよ。」


さすが妻だ、ある程度の事は悟っていた。

結局、僕は、店長から許しをもらい、映画のロケで長崎に行く事を許可された。


仕事においても、

何が何でも家族を守れ!

簡単に仕事を辞めるな!

ということで、会社に残してもらえる事になった。


つまり、なんだかんだあったが、

仕事に支障のない範囲で、芸能活動することを許され、会社員としても続けていけるという、最も幸せな状況になったのだ。


それというのも、店長のご好意と、

何があっても僕に従うと言った、妻のおかげだ。


「ほんまに、よかったんか?俺、会社辞めようとしてたんやぞ?」


お笑い嫌いの妻が、芸人を辞めるか?

会社を辞めるか?の選択肢で、

会社を辞めるという判断をした、僕に従うと言った本意を聞いてみた。


「だって、あんたやったら、どんな時でも、家族の事を一番に考えてくれるでしょ?」


「・・・・」


「どんな仕事してても、何をしてても、家族の事を一番に考えてくれたら。それでええんよ。」


強い。

なんて、強い妻だ。


「あんたは真面目やから、どんな仕事かて、すぐできるよ。芸人なんて、辞めようと思えば辞めれるけど。辞めれないんでしょ?」


「・・・うん。」


「家族を一番に考えてくれたら。ってゆうか、あんたはそういう人やからね。なんも心配してないよ。」


我ながら頼もしい妻を持ったものだ。

きっと、売れてる芸人の妻になったら、もっともっと芸人を伸びさせる妻のような気がする。

何の因果か、売れてない、僕という芸人の妻。

でも、幸せだ。

こんな幸せすぎる事はない。


「まだまだ働いてもらわんと、あかんね!」


「うん。」


そして、次の日出勤すると、なぜかまた店長の罵声がとぶ。


「こら!またこんな事やったら、長崎行かさんぞ!」


「えーーっ!!」


「当たり前やないか!長崎行きたかったら、人一倍仕事せい!芸人したかったら、人の三倍働けい!」


鬼畜だ。

鬼畜だが、店長の心の中はわかっている。

この厳しさも、他の人間に示しがつかないため。

僕のためを思って、怒ってくれているのだ。


この店長のおかげで、なんとか、会社員としても続けていけるのだ。


感謝しなければならない。


妻にも。


この、店長にも。

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