第9話新婚生活

二人で暮らし始めた。


生活は決して裕福ではなかったが、僕は死ぬほど働いたので、お金を使う暇もなく。

なんとか妻は専業主婦でいてもらえた。


さらに家庭に入ると、びっくりするほど家庭的な女性で、料理も掃除も洗濯も、文句も言わずやってくれる人だった。


僕はパチンコ屋の社員とアルバイトを掛け持ちして、さらに休日は芸人活動。

休みの日は、そそくさとネタのフリップやら小道具を持って出掛ける。

そんな事をずっとしていると、妻が目を丸くする。


「あんた!ずーっと休んでへんやないの?会社休みの日は芸人して。死んでまうで?倒れてしまうで?」


「好っきゃねん。お客さん笑ってもらえるのがな。それが、楽しいねん。」


アホみたいに、お笑いについて語る。

妻は呆れていたが、常に僕の身体を心配してくれていた。

パチンコ屋の仕事が過酷なのも一緒に暮らしていたらわかるし、それでも休みの日にゆっくりしないで、お笑い芸人の活動をする。


それほど好きなんやな。お笑いが。

お笑い嫌いだった妻も、僕の行動が、異常であり、でも、必死なのが伝わった。


芸人活動から疲れて帰る。

そのままふて寝する。


朝起きると、散らかしていた小道具やらフリップやらが整理整頓されている。


妻がしてくれていたのだ。


いつの間にか、妻は、芸人の妻になっていた・・・

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る