第6話求婚

彼女に、僕はお笑いをしていると告げた。

「なんでなん?なんで早く言ってくれんの?」


結構責め立てられたが、

「なんかテレビとか、出てるの?」


「昔出てたけど、今はなにも。」


「じゃあいい。」


なぜか許された。

テレビに出ていない事が、芸人として売れていないということが、


僕を救った。


「あんまり、人前で変な事せんといてや。」


「・・・うん。」


そんな訳はない。人前で変なことするのが芸人だ。

それでも彼女は今まで通り付き合ってくれた。


そして、さらに月日は流れ、


彼女にプロポーズした。


彼女はうっすら涙ぐんでいた。

ずっと待ってくれていたようだった。僕も彼女との将来しか考えられなくなった。


彼女の実家のご両親に結婚の挨拶に行ったとき、

その時も僕はご両親にお笑いをしていると告げた。


「まあ、好きなことやるんはええけど。どんな事があっても家族を大事にしいや。」


彼女のお父さんがそう言った。

彼女の実家には、彼女の小さな頃からの写真が一杯飾ってあり、

本当に大切に育てられてきた娘さんなのだなと思った。


この人たちが大切にしてきたもの。

そんな宝物を、僕は頂くのだ。


どんな事があっても、家族を大切にしろ。


その言葉が、ずっと僕に重くのしかかる。


そして僕らは結婚式をあげることになった・・・

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