第2話小さな女の子

さて、時はさかのぼり、

僕は二十代後半。

婚期に恵まれず、まだまだ独身の恋愛経験もろくにない、パチンコ屋で働くピン芸人でした。


根が真面目なもので、まず芸人として知り合う女性といえば、

女性のファン、女性のお客さん、女性スタッフ。

僕らの業界ではこういう女性に手を出すのはタブーでした。

もちろん手を出す芸人もたくさんいましたが、僕はやはり、手を出しませんでした。


パチンコ屋にしても、知り合う女性といえば、

女性アルバイト、女性のお客さん。

もちろんこっちの業界でも、そういう女性に手を出すのはタブーでした。

ので、こちらでも手を出しませんでした。


そんなわけで、二十代後半にしてまだ結婚のけの字もない、面白くもない人生を送るピン芸人でした。


ある日、友達の紹介で一人の女性と会うことになりました。

なんの期待もしていませんでした。

過去に何回か紹介はしてもらった事はあるのですが、みんな、パチンコ屋の店員は嫌いとか、ピン芸人だから笑わして!とかハードルを上げてくる女性ばかり。


そこでピン芸人であることを隠して紹介してもらう事にしました。


幸い、これっぽっちも売れてなかったので、隠す必要もありませんでした。(^^;)


大阪梅田のビッグマン前という、いかにもありきたりな待ち合わせ場所で待ち合わせることにしました。

待っていると数分後、


「あのう、原田さんですか?」


と、後ろで女性の声がしました。

振り向くと、僕よりずっと背の低い、小さな女性が一人立っていました。


その女性が。


そう、現在の妻になる人でした。(^^;)

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