ミルキーウェイでつかまえて

大通りでは七夕祭りが催されていた。

人混みに紛れて、などと甘い考えを

持つべきではなかった。

いや九一もソヨンも本心では七夕を見たかったのだ。人混みに紛れた方が見つかりにくいと言う考えは言い訳に過ぎないのだ。


でなければ金魚すくいに興じたりなどはしなかっただろう。

色とりどりの七夕飾りや、歩行者天国の両側に立ち並ぶ屋台は二人の緊張感を奪っていった。

七夕祭りはソヨンにとって初めての体験だった。興味を惹かれずにはいられなかった。


そもそも人が多すぎて足早に通り抜けることなど不可能だった。

2人が金魚すくいの前に来た時、人波が停滞した。

ソヨンは大きな水槽の中で泳ぎ回る無数の金魚に見入った。

一組の親子が金魚すくいに興じていた。

母親と男の子だった。

もっともポイを握っているのは母親で、男の子は脇で見ているだけだった。


「金魚すくい知ってる?」


九一が声をかけた。


「知ってる。やったことはないけど」


「やってみる?」


「でも、金魚なんて持ってけないわ」


「それは取れたら考えようぜ」


九一はねじり鉢巻の若いテキヤに小銭を差し出した。


「一回ね」


「はい、300万!」


ソヨンはテキヤから網を受け取り、しゃがみ込んだ。

母親がやっているのをしばらく観察した。

母親は水槽の角に金魚を追い詰めると、すばやく金魚を掬い、ボールに放った。

掬い上げるのが2匹まとめてのときもあった。

見事な技だった。

ボールはすでに金魚でいっぱいだった。


「奥さんすごいねえ!」


テキヤは声をかけ、新しいボールを差し出した。


ソヨンはしゃがみ込んだ。

掬い上げる金魚に狙いを定めポイを沈めた。

目の前の母親を参考に、金魚が水面に上ってきた瞬間、切るようにして掬い上げた。

きゃー、やったー!


ソヨンは歓声をあげながら金魚をボールに入れた。


意気込んで次の一匹に取り掛かろうとした時だった。

背後から誰かに抱きつかれた。


「俺の金魚ちゃん見つけた!」


ソヨンは驚き、短いと悲鳴を上げた。

振り返るとボスの手下がニヤニヤ笑いながら立っていた。

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