ジャッキー・チェン vs ブルース・リー3

地面に転がったグレープは無傷な方の左足で立とうとした。

敷島は再び銃を放った。

銃弾が右肩を貫いた。

利き手、利き足は使えなくなった。


「何をぐずぐずしてる! 早く捕まえろ!」


敷島は広道に怒鳴った。

右手に銃、左手に手錠を下げている。

近づきながら広道に手錠を放り投げた。


広道は受け取ったものの、事の展開に唖然として動くことができなかった。


「さっさと手錠をかけるんだ!」


広道はグレープを見下ろした。

右肩、右脚から血を流してはいるものの目は死んでいなかった。

仰向けに倒れながら広道を睨みつけていた。


苦々しい思いが広道の胸に込み上げてきた。

勝つにしろ負けるにしろ決着をつけたかった。

グレープと同様、広道もまた互角に闘える相手を求めていた。

そんな自覚はなかったが、実はそうだったのだとグレープと相対して気づいた。

ついにその相手と出会い、拳を交えることができたにもかかわらず、敷島の介入により頓挫してしまった。


「貸せ」


敷島は立ち尽くす広道から手錠を奪い取ろうとした。

しかし広道は渡さなかった。二人で手錠を引っ張り合う形になった。


「何してやがる」


敷島は広道を睨んだ。


「邪魔しやがって」


「お前らの自尊心に付き合うつもりはない」


2人が揉めている間にグレープが上体を起こした。被弾していない左足一本で立ち上がり、左手だけで構えて見せた。


「まだ終わっちゃいないぜ」


敷島はグレープの左太腿を撃ち抜いた。

グレープは膝をついた。

左手はまだ構えていた。

敷島はグレープの左上腕部を撃ち抜いた。

左手はダラリと下がった。が、顔はまだ構えていた。目はまだ闘う意思を放棄していなかった。


敷島はグレープの上体を靴裏で蹴り倒した。


敷島はグレープを見下ろした。


「ホチョーッ!」


グレープは敷島に向かって気合いを投げ、鼻で笑った。


「やれよ…俺を撃て。殺せ」


敷島は無言でグレープを見下ろした。


「俺は殺し屋グレープだ。殺家ー随一の殺し屋として数え切れないほどの人間を葬ってきた。最後にはお前の弟も殺した。俺をやる理由は十分にある。今、俺をやらねえと後で後悔することになるぜ」


そう言われて、敷島はグレープの額に銃口を向けた。

グレープは静かに目を閉じた。


敵ながら大した奴だ、

敷島はそう思いつつ、銃をしまった。

グレープを足で転がし、うつぶせにした。


「貨せ」


敷島は広道の手にぶら下がっていた手錠を奪い取った。

広道は抵抗しなかった。


敷島はうつ伏せになったグレープを跨ぐと、ダラリとした彼の両手を後ろ手にして手錠をかけた。


(つづく)












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