石垣島ラプソディ
九一とソヨンは敷地内にある離れの建物に寝泊まりした。
ヨナミネが住み込み者用に20年程前に建てたものだ。
二階建て、10人は雑魚寝できる広さがあった。
彼らが住み始めて一週間が経った頃、夜になって離れの建物から女の叫び声が聞こえてきた。
粗末な建物だったので音漏れはするが、それにしてもはっきりと聞こえる程、大きな叫び声だった。
そのときヨナミネ夫婦はすでに床に就いていた。
妻は寝息をたてていたが、寝付きの悪いヨナミネは布団に横たわって天井を睨んでいた。
最近は農作業も若い2人のおかげで楽になり、昼間の疲れが格段に軽減された。
おかげで寝付くのにさらに時間がかかるようになった。
初めてその声を聞いたとき、ヨナミネは二人が喧嘩でもして、女が泣き叫んでいるのかと思った。
しかし、よく耳を澄ますと、それは性交中の声だった。
昨夜までは聞こえなかった、と思う。
風向きのせいなのか、それとも今までは声を殺していたのか、あるいは慣れない仕事に疲れてその元気がなかったのか、とにかくその声を聞いたのは今宵が初めてだった。
以降、女の喘ぎ声はほとんど毎晩聞こえるようになった。ときには一晩で2回、雨で仕事が休みの時は、昼間に聞こえることもあった。
若い男女が一つ屋根の下で暮らしているのだから、性交に励むのは自然なことだが、発する声はあまりにも大きすぎた。
注意するにも何と言えばいいのか分からなかった。
その声に触発されてヨナミネ夫婦も負けじと性交するには歳をとり過ぎていた。
結局のところ、なすすべはなかった。
夜遅くまで励んでも、朝には時間通りに起きて仕事をするので、目をつぶる、いや耳をふさぐことにした。
しかし、性交というのは快楽が本来の目的ではない。
彼らの年齢はときに忘れがちだが、本来の目的は種の保存である。
二人の度重なる性交はついに本来の目的を達成した。
ソヨンが妊娠したのだ。
(つづく)
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