仮面ライダー復活

走るグレープの後ろ姿を潜入は追った。ところで潜入の名前は広道(ヒロミチ)と言った。下の名前ではない、姓が広道だ。


グレープの瞬足は相当なものだった。

広道も走ることにかけては誰にも負けない自信があった。にもかかわず、グレープとの距離は広がらなくとも縮まなかった。

彼の背中を追いながら、時には広道がついて来れるようにわざとスピードを緩めているような気さえした。


広道はピンと来た。

グレープは誰にも邪魔されずに対決できる場所を探しているのだと。

そんな場所を見つけ次第、走るのをやめて広道と対峙するはずだ。


そんな場所…

…あった。


広道はグレープの背中に向かって叫んだ。


「いい場所がある!」


グレープは走るのをやめなかったが、後ろをちらりと振り返った。


広道は荒い呼吸の間隙を縫って続けた。


「俺と…お前が…決着をつけるのに…最高の場所がある!」


グレープは減速し、立ち止まった。


広道も止まった。

グレープとの距離は保った。

電車で向かい合わせに座る程度の距離だ。


グレープが振り返った。

肩で息をしていた。

グレープの息が上がっていることを知って広道は少し安堵した。

あれだけのスピードで走った後で平然とされては、持久戦にもつれたときに勝ち目はない。グレープも必死に走っていたのだ。

広道の呼び掛けに応じたのもあるいは休みたかったからかも知れない。


グレープは呼吸がある程度整うと聞いた。


「どこだ?」


「案内しよう」


「先に場所を言え。潜入捜査官は信用できねえからな」


「あそこだ」


広道はグレープの左後方にある大きな建物を指差した。


グレープは振り返った。

それは、広道が仮面ライダーのボランティアをしていたデパートだった。

あそこなら勝てる、広道はそう確信した。


(つづく)

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