直当たり
オーナー亡き後、「つぶらな瞳」は閉店した。
敷島は押収した従業員名簿をもとにスタッフの住所を直接訪ねた。
最初に訪問したスタッフにモンタージュ写真を見せるとすぐに名前が挙がった。
「これって九一じゃない?」
他に5人のスタッフを訪問して訊いたがいずれも同じ名前を口にした。
彼らの証言によると、写真の人物は木口九一(きくちきゅういち)。19歳。以前、「つぶらな瞳」で働いていた。オーナーのサキに気に入られ、付き合うようになった。
九一は「つぶらな瞳」の常連だったヤクザのボスに迫られていた。
サキは九一をボスから遠ざけるため店を辞めさせた。
敷島はそう話してくれたスタッフにもう一枚の写真を見せた。
「ヤクザのボスというのはこの人物か」
「そう、この人よ。うちの常連だったけど、店に来るたび九一を呼べってしつこいのよ。九一はホストじゃなくて、ただのウェイターだったのに」
敷島が見せたのは「殺家ー」のボスの写真だった。
「この男は被害者(サキ)と木口が付き合ってるの知ってたかな」
「知ってたわよ。だって、ワタシが言ったんだもの。あんまりしつこいもんだから、私、この男に面と向かって言ってやったの。九一はうちのオーナーと付き合ってるからいくら迫っても無理よってね。そしたらお前ら全員ぶっ殺してやるって怒鳴り散らして出て行ったわ」
なるほど、ボスは嫉妬心からサキの命を狙ったわけだ。
サキを殺せば九一は自分のものになるとでも思ったか。
今回の依頼人はボス本人。
しかし、それは今となってはどうでもいい。
真犯人は別にいる。
木口だとしたら?
動機は何だろう?
二人は恋人同士だった。
恋人を殺したいほど憎む理由とは?
木口九一の名前は従業員名簿に記載されていた。
敷島は青柳を連れて九一の住所に向かった。
(つづく)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます