第148話 ソーメン流しをしよう

   

「ポテポテとコッコウ鳥と玉ねぎで作るカレーは作り置きができるからお客さんが来たらご飯を温めるだけで出せるわ。ラーメンは棒ラーメンを使って作ってコッコウ鳥の玉子で作ったゆで玉子を上にのせるの。どうかしら? できそう?」


 ベスさんは少し考えていたけど、


「カレーは家で作ったことがあるからできると思う。ラーメンも簡単だから大丈夫だけど、どのくらい食べに来るかが問題だわ。あんまりたくさんの人が急に来たら回らないかも....」


と首を傾げてる。


「そうね。初めてのことだから想像もつかないわね。とりあえず開店の日は私もいるからたくさんのカレーと温めたご飯をマジックカバンに入れて準備しておきましょう」


 どこに店を開くかはショルトさんに決めてもらった。ショルトさんはとても真剣に考えてくれた。


「まず売れるかどうかわからないということだが、おそらく売れるだろう。ただプリーモホテルでは内装も全部してくれるというので失敗を恐れなくても良いのが利点だ。それに従業員の寮もある。成人して働くようになったら孤児院から出て行かないといけないことから考えても『プリーモホテルガイア』の方がいいと思うよ」


 なるほど。孤児院から出たらアパート借りたりでだいぶお金がかかる。寮も多少はお金がいるけどアパートを借りることを考えたら少なくてすむ。

 クリリもショルトさんの説明に納得してくれた。住むところまでは考えてなかったみたい。

 問題はベスさんで寮生活ができるのか心配だったけど、寮生活に憧れてたと喜んでたので安心した。

 プリーモさんは自分の意見が通ったので、すぐにでも内装に取り掛かると言って帰っていった。そんなに急がなくてもいいのに....。


「ベスさんは明日から勤められる? 孤児院の子も接客の練習とか簡単な料理の作り方とかを教えて行く予定なの。あの調子だと結構早く開店になりそうなんだよね~」


「私は大丈夫。いつでも働けるわ」


 ベスさんはやる気に満ちてるようだ。


「おい、明日から忙しくなりそうだから今日やるぞ」


 タケルが突然話に入ってきた。何をするつもりなんだろう。今日は店は定休日なのに何故か居座ってるなと思ったらすることがあったんだね。


「何をするつもりなの?」


「流しソーメンだ!」


「「「えっ?」」」


 クリリとベスさんは流しソーメンがよくわかってないみたい。私は別の意味で驚いたんだけどね。


「どこで?」


 私が聞くと


「広さからいって孤児院がいいだろう」


と言う。ってことはやっぱりあの流しソーメンをする気なんだ。


「竹があるの?」


「えへん、この日のために取ってきた」


 威張っていうことだろうか? でも竹があるってことは春にはタケノコが取れるのかな? 

 やる気満々のタケルはクリリを連れて孤児院へ。私とベスさんも後に続いた。


「春にはタケノコが手に入るんだね。今年も取って来たらタケノコご飯とか食べれたのに」


「いや、確かに竹に似てるが日本のとは少し違うんだ。伸びるのが早すぎてすぐ成長するからなかなかタケノコは取れないんだよ。あまりにも早く伸びるから名前も竹じゃなくてグングンて呼ばれてる」


 どうも私が知ってる竹とは違うみたい。


「竹ってグングンのことだったの?  グングンの子は幻の食材だって聞いたことがあるよ。いつ生えてくるかわからないし、あっという間にグングンと伸びるからグングンの子は毎年少ししか店に出ないからいつも高値なんだよ」


 日本でいう松茸みたいなものか。少量しか取れないからプレミアがついて高値になるんだよね。


 孤児院に着いたタケルは竹をステータスから出して、クリリたちに手伝ってもらいながら流しソーメンをするための土台を作っていく。竹は節も綺麗に削ってるから足場作ったらすぐ出来そうだね。

 これは私たちの方が急がないといけないようだ。孤児院の今日の夕飯はまだ作ってなかったので、急遽流しソーメンに変更してもらった。みんなに手伝ってもらいながらソーメン大量にゆでて、薄焼き卵も大量に焼いた。きゅうりも百円コンビニで安く売ってるので買って千切りにした。麺つゆは百均で売ってるから多めに買っておく。

 孤児院の子たちは箸の使い方がだいぶ上手になってるから割り箸も用意しておこう。やっぱり流しソーメンは箸で食べないとね。

 日が暮れてくるとタケルが魔法で明るくしてくれた。竹に流れる水も魔法を使ってるみたい。さあ、用意は万端。


「ソーメン流すよ~」


 私が声をかけると


「「「はーい!」」」


「「「いっぱい流してね~」」」


と返事が返ってきた。ビニール手袋をした手で一掴もずつ流していく。


「「取れた~」」


「なんかいつもよりソーメンが美味しい」


「お前、そんなに玉子とったらみんなのがなくなるだろ」


「だって玉子焼き美味しいんだもん」


「ソーメン食べ終わったら、こっちにおむすびとサンドイッチあるわよ~」


 どうやらソーメン流しは大成功だったね。私も誰かにかわってもらってソーメン流しで食べたい。そう、実はソーメン流しって初体験なの。してみたかったんだけど意外とやってる所なかったんだよね。

 楽しみだけどちゃんとソーメンが掴める不安もある。子供でも取れてるんだから大丈夫だよね?

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