第149話 神殿に行こう
「え? 神殿に行くの?」
タケルから神殿に一緒に行こうと言われた。まさかのプロポーズ?な訳もなくクリリのことだった。
クリリの賞金を横取りしようとはこの世界の神殿はけち臭い。そういえば孤児院の隣にあるのに神殿には行ったことなかったな。女神さまの加護ももらってるんだから一度くらいは行った方がいいのかしら。従業員を守るのも経営者の役目だしと重い腰をあげることにした。
孤児院の隣にあるのに行こうと思わなかったのは敷地が広く歩くと結構な距離があるからだ。
神殿長に会いたいというと中に通された。神殿の中はとても煌びやかだった。
こんなに豪華なんだったら何もクリリの賞金を横取りしなくてもいいのに...。調度品の一つも売ったら相当なお金になりそうだよ。
「孤児院は神殿の一部でもあります。私たちは強制してるのではなく、彼なりの誠意を見せて欲しいのです」
キンキラキンの服を着てる人に言われても説得力ないよ。この神殿の神殿長はとにかく派手な男だった。服も派手だが髪も真っ赤で目がチカチカするほどだ。神殿長はヨーグルと名乗った。
「クリリに誠意がないと?」
「賞金を独り占めするのを誠意とは言わないでしょう」
ヨーグルは椅子に踏ん反って座ってる。
「クリリは孤児院の子どもたちのために沢山のことをしてますよ。休みの日には勉強を教えたり、畑仕事も手伝ってます。お金だけが全てではないです。それに賞金はヴィジャイナ学院に通うために必要だから、彼が稼いだものです。あれを寄付したら学院に通う事が出来なくなります」
「獣人がヴィジャイナ学院に? 無駄なことにお金を使ってどうする」
キンキラキンの神殿長ヨーグルはとても失礼なことを当たり前のように言う。これだから宗教家って嫌いだよ。
「あなたは神殿長につかえていながら獣人を差別するのですか? 女神さまはそんなこと言わないはずです」
私が怒って大声をだすと
「君のような子どもに女神さまの何がわかのですか?」
と小馬鹿にされた。
「それは聞き捨てなりませんね。ナナミには女神さまの加護がありますよ。その彼女にそのような事を言って大丈夫なんですか?」
黙って後ろに控えていたタケルが口を挟んだ。
「はぁ? 女神さまの加護? たまに感違いする人がいるんですよね。そのような大それたこと言わないほうがいいですよ。天罰がくだります」
ヨーグルは全く信じていないようだった。
「本当だったらどうしますか?」
タケルが目をキラーンとさせて尋ねる。
「そうですね。本当だったら賞金の話はなかったことにしましょう。私もこの神殿も女神さまの加護を持ってる人には逆らえませんから。はっははは~、でも嘘だった場合は全額置いていってもらいましょうか」
本当に言ってることがけち臭いんだけど、この人本当にここの神殿長さんなのかな。今度クリスにあったら忠告しといたほうがいいね。
ヨーグルは見習いのような人に何か持って来させた。
「これは加護のある人を見極めるものです。この中心に手を置いてください」
水晶のような丸い透明な玉に手を置くと光が私を包み込むように発せられた。眩しくて目が開けられないよ。しばらく経って目を開けるとヨーグルたちは跪いていた。
「この度は失礼しました。ユーリアナ女神さまの加護をお持ちだとは露知らず、お許しください」
そういえばそんな名前の女神様だったなあ。名前までわかるなんてスゴイねこの水晶玉。
「わかればいいのよ。これからは獣人のことも差別しないように」
「いえ、あれは差別ではないのです。ヴィジャイナ学院に行けば差別だらけです。そのような大変な目に合わせたくないからと差し出がましいことをしました。クリリにはもっと楽な道を選んで欲しかったのです」
ヨーグルはもっともらしく言ってるけど、どこまで本当のことを言ってるのかわからない。タケルを見るが、タケルにもわからないみたいで首を横に振った。
まあ、一応解決したからいいことにしよう。
せっかく神殿に来たので女神様にお祈りをして、百均の商品をいろいろお供えしておいた。年寄りの神様(?)もいるみたいなのでオールド眼鏡も追加した。
「できれば月に一度はお祈りに来てください。ユーリアナ女神様も喜ばれるでしょう」
ヨーグルは帰る私に声をかけてきた。
「そうですね。優しい女神様なのできっと喜んでくれるでしょう」
私がにっこり笑って言うとヨーグルは目を見張っていた。この時ヨーグルが誤解したことに私は気付かなかった。言葉は選んで使わないと駄目だね。
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