第145話 ベリートリア国 6
結婚式は教会で行われた。タケルがカホ様の後見人だってことは聞かされたけど、まさか私まで特等席に座らせられるとは思ってなかった。前の人についていけば良いと言われてついていってたらまさかの一列目。今更逃げるわけにもいかず座ったが、居心地がとても悪かった。隣に座ってるタケルを横目で睨んだがスルーされた。
だが、結局この席に座れたことを感謝することになった。カホ様とサイラス様の神々しい姿を真近で見ることができるなんて私は幸せものだね~。
すべての行事が終わったのはいつのことだったのか。綺麗なドレスを着てるのに百均の腕時計をつけるわけにもいかなかったから時間がわからなかった。
「うーっ。苦しいよ」
とにかく苦しかったドレスを脱ぎコルセットを外した。これのせいで何も食べれなかった。
風呂に入って楽な服になると今度はお腹が空いてるのが気になって寝れそうにない。百均で何か買おうかな。こういう時便利だよね~。ってカバンなかった。
この部屋には誰でも入って来れるからカバンをタケルに預けてるんだった。百均で買っても食べれないよ。タケルの部屋ってどこだったっけ?聞くの忘れてた。
夜食とか置いてくれてたらいいのに。
『コンコン』
ドアをノックする音が聞こえる。もしかして夜食かしら。返事もせずに大きくドアを開けると呆れた顔のタケルが立っていた。
「誰か確かめてから開けれよ」
「夜食を持ってきてくれたのかと思って」
「こんな真夜中に夜食持ってくるわけないだろ」
お腹が空きすぎて判断が鈍ったんだよ。
「タケルもいつもなら魔法で入ってくるのにノックなんかしてどうしたの?」
私が不思議そうに聞くとさらに呆れた顔になった。解せぬ。
「ああ、もういいよ。ほらカバン。それとこれやるよ」
「わー、肉饅頭だ」
「お腹空いてたんだろ、最後の方はふらふらしてたからな」
いや、ふらふらしてたのはお腹が空いてたからじゃなくて疲れてたからだからね。
「あれ? 肉饅頭じゃない。これあんこだ」
かぶりついた肉饅頭はあん饅頭だった。疲れた身体に甘いものは良くないとか最近は言われてるけど、甘いもの食べるとなんだか元気が出るんだよね~。
「おいしいよ。これってハリーさんが作ったの?」
生地からハリーさんのところの味がする。
「ああ。前に買ってたあんこで作ってもらったんだ。ずいぶん気に入ったらしく、あんこの作り方を教えてくれって言われたけど砂糖がどの位いるか言ったら諦めたな」
あん饅頭作れたら売れるだろうけど、砂糖が高くて原価が高くなるから厳しいよね。
「寝る前にあんまり食べるとデブになるからほどほどにな。じゃ、おやすみ~」
言うだけいうといつものように消えた。言い逃げだけは得意なんだから。ーーあと一個くらいは食べても大丈夫だよね。
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