第144話 ベリートリア国 5
「「「コッコッコー」」」
変な鳥の鳴き声で起こされた。日が昇り出した途端に合唱のようにうるさい。毎朝これだよ。この王宮に来てから早起きになったよ。
「あれってなんていう鳥なの?」
「知らないのか? コッコウ鳥だよ。シチューにしてただろ? 卵も使ってるじゃないか」
タケルが呆れたように答える。
「じゃあ、王宮でコッコウ鳥を飼ってるの?」
「コッコウ鳥の卵、モウモウの牛乳。王宮にはたくさんの人が住んでるから、自給自足は無理だけど何かあった時のために家畜を飼うのは常識だろう」
何かあった時ってなんだろう。できるなら何もないことを願おう。
サイラス様もカホ様も幸せになってもらいたい。
金髪のサイラス様と黒髪のカホ様だとどんな子供が生まれるのかな。やっぱり黒が強いのかな。
タケルに聞いてみたが
「そんなの生まれてみないとわからないだろう。それに結婚もまだなのに子供って気が早いやつだな」
と言われた。まあ、そうなんだけどこう周りの空気が子供の話が多いのよね~。それだけ待ち望まれてるってことだね。王族にしてはサイラス様の結婚が遅いとも言える。
「でも無事に結婚式が挙げることができそうでよかったね~。一時はどうなることかと思ったよ」
カホ様が王宮から消えたのは私とタケルがこの国に来た夜のことだった。
まさかまた家出? と思ったのは一瞬のことで、
あれほど結婚を楽しみにしてるのに家出なんかするわけがない。
『かくれんぼ』魔法を使われたらどうしようもない。タケルでもよくわからないらしい。でも『かくれんぼ』を知ってるのはサイラス様と侍女の二人とタケルだけ。大きな魔法を使われればタケルにはわかる。犯人もそこはわかってたらしく、実に古典的な方法で誘拐したのだ。
「でもこれで大きな膿は出し切ったからな。一気に方がついて良かったかもしれない」
物語の世界だったら結婚が決まってめでたしめでたしで終わるのに現実は厳しいね。女神様の加護はあるけど、これだって万能ってわけじゃないんだから、うーんつくづく『かくれんぼ』って魔法はこの為にもらった魔法だなって思える。ーーってことはカホ様は初めから王族と結婚するために連れてこられたってことかなあ? いやいや、さすがにそれはないか。
「おいそんなに食べて大丈夫なのか?」
タケルに大食い扱いされるとは.....。考え事しながら食べてたから確かに食べ過ぎたかもしれないけど、タケルほどは食べてないよ。
「タケルほどは食べてないよ」
「何を言ってるんだ? 俺は関係ないだろ。俺はドレスを着ないからな」
ドレス? そうだった!これからあのドレスを着ないといけないんだった。コルセットとかいう恐ろしいものでウエストを作るとか言ってた。
そこまで絞らなくていいようにウエストは大きめに作ってもらったけど、さすがに食べすぎはやばいかもしれない。
「困ったなあ~。今さら食べたものを戻すわけにもいかないし、タケルももっと早く言ってくれればいいのに~」
ドレスを着なくて良いタケルにやつあたりをしてるうちに、その日唯一の穏やかな時間は終わりを告げた。結婚式の準備のために、マリーが呼びに来た。
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