第133話 かるた遊び

   


「いぬも歩けば棒にあたる~」


「「はい!」」


「花よりだんご~」


「「はい!」」


 今日は孤児院に遊びに来てる。かるたは事前に渡していたのでやり方はわかってるみたい。

一人読札を読んでる子供がいる。読み方もなかなか様になっている。

 でも字を見て取ってると言うより絵を見て取ってるような......。うーん。遊んでるうちに少しづつ覚えていけばいいかな。


「読札を読める子供は彼だけなの?」


「今読んでるジャックとアンくらい。少し字が読める子もいるけどスラスラ読むのは無理かな。でもこの遊びで上達するんじゃないかな。ほら、読みたそうにしてるでしょ?」


 確かにジャックの方を見てる子がいる。きっとスラスラ読めないから読ませてもらえないんだね。ああいう子はきっと字を覚えるのも早い気がする。


「クリリは昨日渡した本読んだ?」


「え? 漫画はまだ読んでる途中だよ」


 そういえば昨日は読み終わった漫画も一緒に渡したんだった。


「漫画の方じゃなくて『ももたろう』と『かぐや姫』の絵本だよ」


 百均に子供向けの絵本があったから、クリリに先に読んでもらったのだ。本当は赤ずきんちゃんもあったけど、オオカミが悪役だから遠慮した。忘れがちだけどクリリってオオカミの獣人なんだよね。


「短い話だからすぐ読めたんだけど....なんで桃から子供が出てきたり、竹から子供が出てくるの? ナナミさんの故郷って子供はそういう風に生まれてくるの?」


「えっ?」


 そうきたか! 絵本なんだよー。物語の世界なんだよー。って言ってわかるのかな。


「これはフィクションだよ。物語の世界の話だから。そんな果物や植物から子供が生まれてくるわけないでしょ」


「そっか。良かった。果物や植物から生まれて来るんだったらどうしようかと思ったよ。果物とか包丁で切って間違って殺しちゃうんじゃないかとかいろいろ想像しちゃった」


 それってホラーだよ。うーん。ベスさんの本屋には子供向けの本がないから売ってみたらどうかと思ったけど、日本の絵本はこの世界で通用するかな? 少し不安になってきた。

 でもせっかく持ってきたから孤児院に置いて帰ろう。売るのはみんなの反応見てからにしたらいいよね。


「桃太郎の鬼退治っていうのは魔王退治みたいで面白かったよ。」


ん? ってことは桃太郎がタケルってこと? 仲間を集めて退治する話は意外と受け入れられるかもしれないね。でも報酬がきびだんごだからなあ~。


「蛙の子は蛙~」


「「「「はい」」」」


 よし! みんなが遊んでる間に昼ご飯を作ろう。今日は何を作ろうかなあ~。






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