第132話 漫画を買おう

   


「いらしゃいませ~」


 どうやらベスさんが店番してるみたい。


「おはよう、ベスさん。今日も店番してるの?」


「さっきまでお父さんがしてたんだけど、お昼の休憩に入ってもらったの。ナナミさんは店の方は大丈夫なの? お昼の休憩は13:00からでしょう?」


「コレットさんとクリリがいるから大丈夫よ。これ社員旅行のお土産。温泉まんじゅうなの。家族みんなで食べてね」


 鞄から温泉まんじゅうの箱を取り出して渡した。


「ありがとう。まんじゅうなんて久しぶりに食べるわ。みんな喜ぶわ」


 喜んでくれてよかったよ。温泉まんじゅうを売るようにルイスさんに進めたのは私だ。やっぱり温泉といえば温泉まんじゅうがないとね。


「今日は新聞と漫画を買いに来たの」


「あら、ナナミさんでも漫画って読むのね。どういったものがいいのかしら。この辺りが漫画コーナーよ。さっきまで父さんが居たから人がいないけどそろそろ立ち読みの人たちが来るわよ」


「立ち読み禁止とかしないの?」


「禁止するのは簡単だけど、買えない人にも読んでもらいたいし、本当に欲しければいつか買ってくれると思うの。今はお金がなくても冒険者の人たちは突然お金持ちになったりするしね」


 これも損して得取れになるのかな。まあ、クリリが字を読めるのも頭が良くなったのもここで立ち読みが出来るからだよね。一度読んだものは忘れないクリリだけど読むものがないと覚えられないもんね。

 私はドキドキしながら漫画を手に取った。あんまり期待しすぎると反動が大きいからね。


「......。......」


 確かに文字が少ない。日本でいう四コマみたいな感じかな。でも、確かに漫画だ。異世界にも漫画があったよ。印刷ができるんだね。紙は日本のようによくないけど、でも嬉しいよ。また漫画が読めるってわかって嬉しいよ。


「文字が少ないんですね」


「漫画ですからね」


 どうやら漫画って文字が少ないものだと思われてるらしい。ここでは文字が少なくて絵が多いのが漫画がなのかも。


「漫画ってベルーガ国だけで作られてるんです。漫画の印刷の仕方はあの国だけの秘密らしくて、各国がスパイ活動もしてるけど今だにどの国も盗むことができないんですよ」


 ベルーガ国かあ。タケルに今度連れて行ってもらおう。もっといろんな種類の漫画があるかも知れない。

 私はその後も漫画のことをいろいろベスさんから聞いた。漫画家の数が少ないこと。輸送に時間がかかるから、発売されてから数ヶ月後にしか新刊が手に入らないこと。話は尽きない。

 まだまだベスさんと話したかったけど、ベスさんが言ってたように立ち読みの客で店が混雑してきた。

 お昼ご飯も作らないといけないから帰ることにした。

 漫画数冊と新聞を購入した。少し高いけどクリリもきっと読むだろうから無駄にはならないよね~。






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