第131話 識字率を上げよう

   


「朝日が眩しいよ」


 昨日は結局、たくさんの在庫を要求されて帰ってくるのが随分遅くなった。

 夕飯を期待してるタケルに100円コンビニの500円の弁当で我慢してもらい(タケルは喜んでたが...)明日のために早めに寝ることにした。

 それでもまだ眠たい。ひたすら眠りたいよ。

 私の眠りを妨げる目覚ましが鳴りだした。さすがに起きないと駄目だよね。下からティーグルの鳴き声もするし.....。



「ティーグル、おはよう!」


「にゃー」


 ティーグルが鳴きながら頭をこすりつけてくる。


「お腹すいてるのね~すぐ餌をあげるからね」


 今日はササミ入りの餌を4缶開けた。大きいから4缶でも少ないみたい。ソーセージとハムも追加した。

 さてと、今度は私とクリリの朝ごはんを用意しないとね。久しぶりにホットケーキにしよう。クリリには目玉焼きとウインナーも焼いて、コーンスープもいるよね。


「おはよう、ナナミさん!」


「おはよう! 丁度できたところよ!」


 クリリと一緒に朝ごはんを食べる。クリリは育ちだかりだから5枚のホットケーキをペロリとたいらげた。


「今日は忙しいかもね。落ち着いたら本屋に行ってくるから、店番お願いね」


「本屋に新聞があるって聞いたから読んでみようかなって思って」


「そういえばこの店のことも書かれてたね」


「えっ?」


 なんと、『マジックショップナナミ』の事も知らないうちに宣伝されてたらしい。なるほどね。爆買いツアーも新聞のせいならわかる。こんな田舎の街の1ショップの事が富豪の間で話題になるなんておかしいと思ったよ。

 勝手に掲載してるんだから広告料の請求は無いよね。


「クリリは新聞を読んでたんだ」


「俺は立ち読みばっかり。ベスさんが店番だったら怒られないからね」


 ベスさんやおばあさんが店番の時は立ち読みする人が多いらしい。そういえばこの世界の識字率は低いって言ってたけど、立ち読みする人がいるのならそれほどでもないのかな。


「結構字が読める人っているんだね」


「まあ、いるのはいるけどやっぱり少ないよ。孤児院でも教えてるけどやる気がないと全然覚えてくれないからね」

 

 そういうものか。日本は学校があるから覚えてたけど、学校がなかったらどうだろう? 周りの人間が字を知らなかったら覚えようと思うだろうか?


「そうだ!」


 私は百均であるものを買ってクリリに見てもらった。百均で買った商品の文字が私には日本語で書かれてるようにしか見えてないけど、クリリにはこちらの文字で見えるようなので確認してみた。


「これってなんですか?」


「かるただよ。これはゲームになってるから遊び感覚で字を覚えられると思うよ」


「絵札と読札があるんですね。これは面白そうです」


「それとこれがお絵描きボード。字をこうやって書いてもこの下にある赤いつまみをスライドささせるとすぐに消せるから何度でも練習できるのよ」


 私がやってみせるとクリリは何度でも書いては消すのを繰り返してる。

 まだまだいろいろあるけど、とりあえずこれで様子を見よう。

 孤児院で使ってみて良いようだったら店でも売ろう。これで識字率あがるといいけど。


「あれ? でも字が読めない人が多いのに立ち読みの人がいるなんて....まさかベスさん目当てのお客さん?」


「おばあさんの時もいるって言ったでしょ?さすがにおばあさん目当ての客はいないよ~。あれはね漫画目当てなんだよ。漫画は字が読めなくても分かるものが多いから、とっても人気があるんだよ」


「っええぇーー!」


 異世界で漫画があるなんて! ん? でもどうやって作ってるのかな? まさか1冊づつ手作り?













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