第101話 ランチミーティング

「クリリ、アイスクリームは売れてますか?」


「はい、ぼちぼち売れてきてます。口コミで広がってるようです」


今日のお昼はご飯を食べながらのミィーティング、いわゆるランチミィーティングだ。クリリもいつもより言葉が丁寧な気がする。

今日の賄いはソーメン。これから暑くなるから、この世界でソーメンが売れるかも検証していきたい。


「このソーメン? 暑い時には喉越しもいいし、簡単に作れるから売れると思うわ。ただ作り方の説明は必要になるけど」


タケルはいつものように無言でひたすら食べている。付け合せの玉子焼きがすごい勢いで無くなっていく。油断してると全部食べられそう。クリリがそれに気付いたのか玉子焼きを慌てて取っている。


“頑張れ!クリリ!タケルに負けるな!”


私は心の中でクリリに声援を送る。



「これは報告だが、王都でツアーが組まれた」


ショルトさんが玉子焼きをさりげなく取りながら言う。

今日はショルトさんにも来てもらっている。ソーメンについて世代間の違う意見が欲しかったからだ。


「ツアー?」


私には関係なさそうだけど......。


「マジックショップナナミに来る買い物ツアーだそうだ」


「はぁ?」


「貴族はそんな事しないから、富裕層の一般庶民だ。どうもプリーモ商会の旅行会社が関係してるようだ」


またプリーモ商会。プリーモ商会って旅行会社も経営してるみたい。この世界にも旅行会社ってあったのねか。なんか嫌な予感するよ。爆買いツアーみたいにならないといいけど......。


「爆買いツアーだな」


ヒィィィ! 私の心の声が聞こえたのかと思ったよ~~。タケルはこういう時だけご飯を食べてた手を止めて不吉なことを言う。


「爆買いとは限らないよ。ちょっとだけ買うつもりかもしれないでしょう?」


だから不吉なこと言わないでって目で訴える。


「そんな目で見ても現実を受け入れないと! あのプリーモ商会が関わってるんだから絶対爆買いツアーになるさ」


「爆買いツアーっていうのがどんなものかよくわからないが、王都からわざわざこの店だけに来るツアーだからな。凄い事になりそうだ」


ショルトさんまで不吉なことを......。


「ナナミさん俺売るの頑張るよ! ナナミさんはいつものように店の奥で本でも読んでてよ」


クリリってマジ優しい。でもさすがに爆買いツアーだったら手伝わないと店が回らないだろう。


「はい、私もそういう時は残業しますよ。頑張りましょう」


コレットさんからも優しい言葉がもらえた。本当に優しい従業員ばっかりだよ。

タケルからは何もなく、ただソーメンを口いっぱいに頬張っていた。




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