第99話 おかえりタケル
「何てことだ!」
本を読んでたらタケルの声が聞こえてきた。どうやら用事が済んで帰ってきたらしい。結構長かったけど何してたんだろう。まあ、伯爵だって事だから仕事溜まってたんだろうけど。
「ああ、少し離れてる間にまさかこんな事になるなんて!」
まだ何か言ってるよ。タケルが喚くような事ってなんかあったかなぁ。
それにしても店で騒ぐのは困る。仕方ないので本をテーブルに置いて店に出る。
「おかえりタケル」
久しぶりタケルに挨拶をする。
「.....おう、ただいま」
数日前と変わらない姿にちょっとだけホッとした。ちょっとだけだけどね。うん。怪我はしてないから大丈夫だね。
「で、なんか喚いてたけどなんかあったの?」
私は疑問に思ってたことを聞く。するとタケルは待ってましたとばかりに喚き出す。
「そうだよ! 俺がいない間にアイス売り出すなんてひどいじゃないか。ああ、1番に食べたかったのに。2番、3番ならまだしも結構売れてるっていうから何番目かもわからないなんて! ひどいじゃないか!」
そんな事で騒がないでほしいって心から思うよ。ほら、クリリとコレットさんが呆れて見てるよ。
「タケルさんごめんね。俺、お腹壊すほどいっぱい食べちゃったよ」
いや、クリリそれは言わないほうがいいよ。
「そうか、そうか。だったら俺もお腹壊すぐらい食べるぞ!」
そんな宣言要らないから。なんかタケルって食べ物のことになると妙に子供っぽくなる気がする。精神年齢はクリリと変わらないよ。
「やっぱりアイスクリームも日本の方がいいな」
1本目のアイスをペロリと3口で食べ終えるとタケルは呟いた。
「そんなに違うの?」
私はこっちの世界のアイスを食べた事ないから分からない。貴族様しか食べられない高価な食べ物だとは聞いてるけど1度食べてみたいな。そういえばコレットさんも全然違うって言ってたっけ。
「こっちはまだ明治時代のアイスクリームってとこだな」
「明治時代のって、タケルも生まれてないでしょう」
どうもタケルの言ってる事は分からない。
「そのくらい古いアイスって事。このアイスクリーム売り出したらこっちの世界の料理人も色々工夫してくるだろうから進化するさ。最近は料理も変わってきたってショルトさんも言ってたしな。まだまだこの街だけだろうけど、段々と広がっていくんじゃないかな」
変化してるんだ。それがいい事なのかどうかは今は分からないけど、いつか良かったって言えるといいなって思う。
タケルが2本目のアイスを食べてる。本当にお腹壊すよ!
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