第98話 クリリの1日ークリリside
俺はいつもより早く目覚めた。昨日からお腹の調子が良くないのだ。
「どうしたのかな、変なもの食べてないんだけど」
ポーションはあるけど、そう再々使う物でもない。怪我と違って病気にはあまり効かないのだ。気休めにしかならないのだからお金がもったいない。
「それにしても暑くなってきたな」
クリリはナナミの店に行く前にポッキンアイスを取り出してジャリジャリ食べる。これを食べると暑さが和らぐ気がする。
ポッキンアイスがもう残り少ないから買って帰るの忘れないように頭にメモした。
「おはようございます」
「おはようクリリ!」
ナナミさんはいつもと同じように元気に挨拶してくれる。
「今日はごはんとお味噌汁に卵焼きの朝ごはんだよ」
ごはんと味噌汁はナナミさんとタケルさんの好物だ。俺にはまだその美味しさがわからない。不味くはないけど味がしないごはん。カレーをかけて食べるときは気にならないけどね。
「今日はふりかけごはんにしたよ。クリリってごはん苦手でしょ? ふりかけをかけたら味があるから美味しいよ」
何も言ってないのにナナミさんにはお見通しだったみたいだ。早速席について食べることにする。
ナナミさんも一緒に食べる。一人で食べるのは味気ないからといつも言ってる。
「ナナミさんはふりかけかけないの?」
「ふふ。ふりかけも好きだけどこの何もかけてないご飯もすきなのよ」
ずっと食べてたらいつか理解できる日が来るのかな。
「美味しい!」
思わず声が出た。ふりかけごはんは思ってたより美味しかった。味噌汁にはポテポテが入っていた。ホクホクしてて美味しい。ナナミさんはまだまだよって言うけど、料理上手だと思う。
しばらくするとコレットさんが来た。
「クリリお腹押さえてるけどお腹痛いの?」
コレットさんと仕事して2時間くらいした頃心配そうに聞かれた。俺は正直に話した。するとコレットさんはクスクス笑う。
「ごめんなさい。笑うつもりはなかったけどうちの旦那と一緒だからついつい笑ちゃったわ」
「旦那さんと同じ?」
「そうよ。冷たいものの食べ過ぎでお腹の壊したの。クリリにも癒しの魔法かけてあげるわ」
コレットさんが癒しの魔法をかけてくれると不快感がおさまった。俺たちはまだ冷たいものに慣れてないから食べ過ぎは良くないそうだ。ポッキンアイスが原因だったなんて全然気づかなかったよ。
「クリリお疲れ様。気をつけて帰ってね」
ナナミさんが手を振ってくれる。俺も手を振りかえす。今は日が長いのでそんなに暗くない。
しばらく歩くと声がかかった。
「おい、お前マジックショップの店員だろう」
見るからに柄の悪そうな5人組だ。
「何か用ですか?」
「店に強盗に入るから手伝え」
「手伝えって手伝うわけないだろ!」
俺はタケルさんからもらってたバクチクを取り出して火の魔法でつけて投げつけた。
投げた後は家まで走る。
後ろからわーっという声とバンバンという音が聞こえてくる。走っていると騎士の人と出会う。
「クリリ大丈夫か?」
騎士のノエルさんだ。知ってる人だったのでホッとした。
「はい。大丈夫です。強盗はあっちに転がってます。バクチクなんですぐ動けるようになるってタケルさんが言ってました」
「わかった。気を付けて帰れよ」
ノエルさんたちを見送ってから俺は帰る道を急ぐ。
「なんかナナミさんといると平穏とは遠くなっていく気がする」
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