第87話 春が来た
やっと春が来た。
今タケルの領地に来てます。理由は簡単に説明すると種まきと収穫のためです。ん? 種まきと収穫が一緒はおかしい? まあ、そこはタケルの魔法を使ってもらうの。全部じゃないですよ。確かめる分だけ。
「ユウヤが言ってたんだけど日本の野菜の種って百均で売ってるのか?」
タケルがこんな事聞いてきたのは2週間前くらいのことだった。
「うん。あったと思うけど?」
私は百均を思い浮かべながら答える。
「日本のって品種改良されてるから育ちやすいだろ? こっちの農業に役に立たないかって」
確かに品種改良されてるからこっちで育つならいいかも。少しはこっちの世界に貢献できるかな。
「やっぱり農家って大変なの?」
こっちの世界に来てから半年近くになるけど農家って見たことないからわからない。
「この何年かは天候いいからいいが、俺がこっちに来たときは日照りが続いて畑が枯れてたから、子供が売られたり大変だったみたいだ」
え?畑が枯れてたら品種改良された種でも育たないと思うよ。そこはため池作るとかしたほうがいいよ。水の確保は大事だよ。
でもまあここは野菜の種類も少ないみたいだから日本の野できたらいいかもしれない。
「でも日本の野菜ってこっちでも同じものできるのかな。種はいくらでも買えるけど育つかなぁ」
「出来ないのか?」
「育ててみないとわからないよ。太陽はあるけど、月が2つあるんだよ。条件が違うからどうかなぁ」
私が言うとタケルは腕を組んで考え込んだ後に突然宣言した。
「よし。今度の休みは俺の領地で種まきだ」
タケル1人で言ってくればって言いたかったけど、クリリが跳んで喜んでるから一緒に行くことになった。
ーーというわけで朝も早くから、畑の前で種まきしてるの。畑は耕してくれてるから、ただまくだけ。
植えるのは、大根・人参・ほうれん草・枝豆・小松菜。特に小松菜は厳寒期を除いたら一年中収穫できるというから期待できる。
種を蒔き終わったら、タケルに一つ分だけ魔法で成長を促してもらった。みるみるうちに芽が出て育っていく。これはとても魔力を使うから、割に合わないから魔法で成長させる人はいないそうです。今回はちゃんと収穫できるか確かめるために仕方なく使ったの。
「これはほうれん草ですね。少し日本で見るのより大きい気がするけど魔法使ったからかな」
私はほうれん草を手にとって首を傾げる。
「そうだな。枝豆も大きい気がする」
タケルも訝しい目で枝豆を見てる。
「旦那様、お帰りになったのなら言ってください」
突然大き声がして振り返ったら、眼鏡をかけた20台後半の男性が立っていた。
「ああ。ちょうど良かった。これ料理するから調理場使うぞ」
タケルはそれだけ言うと収穫した野菜を持ってさっさと歩いていく。仕方なく私とクリリも後に続いた。
調理場に着くと朝早いからか誰もいない。
「この調理場は日頃使ってないから遠慮なく使え」
タケルは私にそれだけ言うとちょっと用があると言ってさっきの男性とどこかに行ったよ。やっぱり私が作るのね。
ホーレン草は茹でてツナと和えて、大根はふろふき大根でいいかな。枝豆は茹でるだけでいいか。小松菜はベーコンで炒めよう。
「クリリも手伝ってね」
私が言うとクリリは
「うん。どんなものが食べれるか楽しみだよ」
と言ってくれる。本当にクリリは癒しだよ。
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