第84話 遠足に行こう
「なんで俺たちは歩いてるんだ? パーティーはどうなったんだよ」
タケルが喚いてます。あのリバーシ大会から10日。まちにまった休日。しばらく休んでたからこの10日間の忙しさは尋常じゃなかったよ。どこから聞いたのか双眼鏡の問い合わせがあってすごく売れた。何に使うのか、すごく役に立つと冒険者らしき人が言ってた。まさか覗きじゃないよね......。
「仕方ないでしょ。クリリのリクエストなんだから」
クリリにパーティーをしようか、それとも何かしたい事ある? って聞いたら遠足に行きたいって言ったの。どうも私とタケルが原因らしい。
「この間遠足の事で言い合いになった事覚えてる?」
「ああ。確かおやつの値段だったな。お前が500円て言って俺が300円って言ったんだったかな」
「その事じゃなくて、遠足で食べた弁当の事。タケルはおにぎりに唐揚げとウインナーで玉子焼きがあれば最高だって言ってたじゃない」
私が言うとタケルも思い出したみたいで手を叩いた。
「そうだった。ナナミはおにぎりじゃなくてロールサンドイッチが遠足の定番だったって言ったんだ。たまごもゆでたまごがいいって......。」
「どうもその事を聞いて弁当食べたくなったみたいなの」
「弁当なんて別に歩かなくても食べれるのに」
タケルの台詞に呆れた。
「何言ってるのよ。タケルが言ったのよ。いっぱい歩いたらその分美味しく感じられるんだって!それが遠足の醍醐味だって......」
「......そういえば言ったな」
そういうわけで今日は朝早くから弁当作りで大変だった。コレットさんは主婦だからさすがに遠足には来ないかと思ってたけど夫婦で参加してる。5人分の弁当だから時間がかかったよ。
遠足の場所はタケルがこの間言ってた温泉のある場所。春が近いとはいえ、さすがにまだ寒いから足湯くらいしかできないけどね。
魔物がいるから、皆さん剣を腰にぶら下げてます。クリリまで剣を持ってるから、私もと思ったけどタケルに
「剣を使えるのか?」
と聞かれ
「使ったことない」
と答えて
「かえって危ないから持つこと禁止」
って言われた。それでも諦めがつかなくて、タケルに内緒でコレットさんの剣をもたせてもらったら重くて重くて......諦めるしかなかった。
タケルが目印置いてるとことに転移してから歩く事になった。
「どうせなら温泉あるところに転移出来たらいいのに」
私が言うとタケルが呆れた表情です。
「歩かないと遠足にならないってナナミが言ったんだぞ。それに転移する場所は魔物がいない所でないとな。転移した途端に死にたくないだろ?」
ごもっともです。
「この森の魔物は倒すとドロップ品を沢山落としていくって有名なんだ。その分強いからこの森にこれる人は限られてる。勇者と一緒でないと俺たちも来れないよ。ナナミさん誘ってくれてありがとう」
コレットさんの旦那さんノエルさんが嬉しそうにお礼を言ってくる。温泉に動物が入ってくるってタケルが言うからそこまで危険な森とは知らなかったよ。
ただの遠足だったのに魔物退治も付いてきそうです。
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