第66話 ガイア街の騎士ーノエルside




『ド、ドーン』


凄まじい音がガイア街全体に響きわたった。地面が揺れたようだ。


ガイア街の騎士ノエル・アシュリーは急いで音の下方向に走っている。つい最近まで実家の方に里帰りしていたので、噂でしか聞いてなかったのが悔やまれる。本当にこの平和な街でこんな事が起きてるなんて。


「隊長、そんなに急がなくても大丈夫ですよ。また勇者様が片ずけてくれてますよ」


「そうですよ。タケル様がついてるから心配いりませんって」


後ろから追いかけてくる部下たちが口々に何か言ってる。何が心配ないだ。勇者といっても他国の領主だろう。こっちの味方だと何故言えるんだ。


「それにしても《マジックショップナナミ》って襲われるの何度目だ?」


「開店してからだと6度目じゃないですか」


「段々酷くななっていくなぁ」


「仕方ありませんよ。次々に新しい商品を売って、あれほど儲かってるんですから。おまけに経営者が18歳の少女ですからね」


「でも勇者タケルがそばにいるんだから、いい加減諦めてほしいですよ。魔王を倒したんですよ。盗賊が束になっても相手にならないってーの」


《マジックショップナナミ》は突然この街で商売を初めて大ヒット商売を連発している店だ。ノエルの妻は昨日からそこで勤め始めた。昨日の夕飯はそこで買ったカレーとかいう食べ物だった。辛いけど癖になる味だ。ヒットするのも頷ける。


《マジックショップナナミ》に近づくに連れて夜中なのに窓を開けて外を伺っている人が増えている。

さすがに警戒して外に出てくる人はいないようだ。


「おっ、やっと来たか。俺より遅くくるなんて職務怠慢じゃないか」


あれが勇者か。何か失礼な事を言ってる。


「勇者様に敵うわけないでしょ。移動魔法が使えるんだから」


部下が笑いながら答えている。いつもの事なのだろう。軽口を叩けるほど仲良くなってるようだ。


「隊長のノエル・アシュリーだ。そこに転がってるのが犯人か?」


「俺はタケル・カイドウだ。今回の敵は魔法使いが混ざってたから音が響いてすまなかった。シールドをはったから被害は出なかったんだが、音までは防げなかった」


音が響いたことを謝ってくる。どうやら勇者タケルは悪い人ではなさそうだ。


「いや、こちらこそ遅れてすまない。ご協力感謝する」


寝転がってるのは10人位いそうだこれを1人で片付けたのか。部下たちに命令して捕縛していく。


窓を開けて眺めていた人たちも安心したのか窓を閉めている。そのうち窓の明かりも消えるだろう。


「ところでナナミさんはどちらに?挨拶しておきたいんですが」


妻が働かせてもらっているのだから一言言っておいたほうがいいだろう。


「あ~。挨拶はいいよ。ナナミは寝てるようだから」


タケルは気まずそうに呟いている。


「はい?」


これほどの騒ぎで寝ているとはどういうことだろう。


「魔法で眠らせてるんですか?」


「いや、そんなことはしてないよ。今までも1度も外の騒ぎに気付いてないよ。1度寝たら起きないタイプみたいだな」


そういう問題ではないように思うが......。


「タケル様も大変ですね」


ノエルが励ますと


「まあ、いてくれるだけで有難い存在だからな。せいぜい守らせてもらうさ」


とタケルが笑って言った。


勇者というのも楽ではないなとノエルは思った。




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