第62話クリリの思惑ークリリside



俺がナナミさんを初めて見たのは


『タダで美味しいものを配ってる変な女の子がいる』


って聞いて慌てて最後尾に並んでマヨネーズとジャムをもらった時だ。なぜか僕たちには飴とパンもくれた。ナナミさんは飴の食べ方を丁寧に説明してくれた。

飴は孤児院のみんなで食べた。とても甘くて、舐めても舐めても美味しくて忘れられない味だった。残りの飴の争奪戦で勝てた時は思わずガッツポーズしたよ。争奪戦はじゃんけんだ。これはだいぶ前の勇者様が広めたって聞いている。誰も怪我をしないズルが出来ない公平な戦い。だからこれで負けたからって文句を言う奴はいない。


二度目の出会いはオールド眼鏡を買いに行った時だ。やっと貯めたお金を持って店に行ったら閉まってて、でも諦められなくてドアを叩いたらナナミさんが店を開けてくれた。

オールド眼鏡を買いに来たのに何故かカレーという食べ物をご馳走になった。カレーは辛くて辛くて、でも食べても食べても欲しくなる不思議な食べ物だった。ペットボトルというのを見たのもこの時が初めてだった。ナナミさんは見たことのないものを沢山持っている。不思議な人だ。


その後も孤児院にカレーを作りに来たり、カレーを寄付してくれた。先生たちはピーラーが気に入ったようで、しばらくはポテポテサラダばっかり食べさせられた。美味しいからいいけどね。


そして何故か改装オープンに合わせて俺を店員として雇ってくれることになった。この店の店員になりたい人は沢山いるのになんで俺なんだろう。ナナミさんは


「クリリはもの覚えも早いし私よりこの街の事に詳しいからよ」


と言ってくれたけどナナミさんに比べたらおれの弟分の5歳のアルだって詳しいよってつっこみたくなったよ。でもこの美味しい仕事を誰にも譲るつもりはない。見たことのない商品を売ることが出来るのだから。ーーそして食べることも出来るのだから。

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