第37話 オムライスを作ろう
「家を買おうと思うんだ」
勇者タケルは何を思ったのか突然そんな事を言い出した。
「家ってそんなに簡単に買うものじゃないですよ。ここに永住する気ですか?」
「ナナミ次第かな」
サラっとすごい事言ってくれます。
「ナナミショップ次第って言ってください。人に聞かれたら誤解されますよ」
「誰もいないから大丈夫だよ」
もう閉店してますからね。タケルとはなんだかんだでいつも閉店してから話してます。日本のこととかは微妙な話だから迂闊に人がいるところで話せないのです。最近は慣れてきたのかお客様に商品説明してくれたりとか商品出しとか手伝ってくれてます。
いつもただで手伝ってもらってるので、今日はオムライスを賄いで出してあげました。二階のキッチンで卵巻くだけですけどね。二階で作ってる間に明日の準備の商品を棚に並べてもらってます。
ポテトサラダとオムライスにコーンスープが賄いメニューです。今日は私の分も作ったので一緒にいただいてますよ。
「家買わなくてもアパートとか借りたらどうですか?」
「うーん。それだと風呂作れないでしょ。風呂作りたいんだよね」
「風呂!やっぱり風呂欲しいですよね。でも貴族の人くらいしか持ってないって言ってましたよ。高くて庶民には手が出ないって。」
「値段の問題じゃないよ。食生活潤ってきたから、今度は風呂だよ。魔法で綺麗にできても風呂につかりたいでしょ? 日本人ならわかるはずだよ」
「わかりますよ~。私も欲しいです。でも貴族の風呂って日本のと同じなんですか?」
「王宮にいるとき入ったことがあるが大体は同じだった。多分俺の前の勇者たちの誰かが広めたんじゃないかな。魔法で洗浄できる前は宿屋にもあったらしいから、作り方は問題ないだろう。ただこの街に作れる人がいないから王都から来てもらうことになりそうだな」
「やっぱり風呂作るのって大変なんですね」
「ここって借りてるんだろ? 勝手に風呂とか作ってもいいのか?」
そうでした。たらいで即席風呂を作るのと違って大工事ななるのだから、許可入りますね。
「明日ショルトさんに聞いてみます」
「俺も明日家を売ってないか聞いてみるよ。風呂の注文はそれからだな」
どうやら家を買うのは決定してるみたいです。
「そういえば着の身着のままここに召喚されたって言ってたけど、何も持ってこれなかったんですか?」
私なんか着てるものもこの世界のだったから本当に何もだけどね。タケルは服は着てたみたいだからどうなんだろう。
「高校生の時だったから、学生かばんは持ってたよ。ちょうど家に帰る途中だったんだ」
「学生かばんだったら、中身は教科書ですか?」
「そう役に立たないだろ?他には財布とスマホ。スマホも充電切れたから使い物にならないよ。あっそうだ。充電器って、百均でないの?」
「さすがに充電器は百円ではないですよ」
「そうだよな。電波ないから使い道あんまりないんだけど、写真とか入ってるからな」
スマホ持ってこれていいなって思ったけど、電波ないし使い道ないよね。しかも充電切れてたら全く使えない。かわいそうだけど宝の持ち腐れってやつだね。でも写真は見たいよね。なんとかしてあげたいけど、百均じゃ無理だよ。
「充電器も持ってたんだけど、乾電池も無くなったから......」
「え? 乾電池式の充電器なんですか? それ今持ってます?」
「ああ。使えないけど手放せなくて」
タケルはそう言うとスマホと充電器をテーブルに置いた。
「乾電池なら百均にありますよ。安いからそれほど強力じゃないですけど、少しは充電できると思いますよ」
充電器を見ると単三を4個使うものだった。百均で単三の乾電池、2個100円を6個買った。
乾電池を入れてスマホにつなぐと無事充電ランプがついた。
「え? ホントに充電できてる。」
「そうですね。この乾電池入れるとこが壊れたら使えないですから、気をつけてくださいね。これってここで作るのって無理なんですか?この部分だけなら作れそうですけど」
「どうだろう。乾電池がないから無理だとおもってたからなぁ。研究してみるよ」
やっぱり理系男子ですね。自分で研究するそうです。
あれ?何してるんですか?写真見るんじゃないんですか? はーぁ。結局ゲームがしたかったんですね。
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