第36話マジックショップナナミ2ー勇者side



ガイアについたのは18時近かった。馬車から降りると皆宿屋に急ぐ。俺も馬車で聞いた評判のいい"くまの寝床"に走った。早く宿を決めて店屋に行きたかったのだ。"くまの寝床"でマジックショップナナミの場所を聞くと丁寧に教えてくれた。


そして、俺は日本に帰れないとわかった時にも流さなかった涙を不覚にもカレーを見て流してしまった。それまで我慢していたものがこみ上げてきたのだ。


この世界に来たのはまだ18歳の時だった。あれから3年。いろいろなことがあった。魔物を初めて剣で倒した時の手に残る感触。死と隣り合わせだった魔王退治の旅。生きて帰れてからも毒を盛られそうになったこともある。上位鑑定持ってなかったら死んでいただろう。

そのこともあって旅に出ることにしたのだ。あの王様が悪いわけではないけど英雄と騒がれる俺を邪魔に思う人たちが、あの国には多くいた。要するに逃げ出したのだ。老獪な貴族たちに若い俺が敵わないのは当たり前のことだった。今なら少しはわかる。貴族たちも俺が怖かったのだろう。魔王を倒した俺が本気になったら国を乗っ取ることも容易なのだから.......。


涙を流し続ける俺に誰も話しかけてはこなかった。

ただ周りが静かになった時、横に店主が立ったのがわかった。


「これって日本の商品ですよね」


聞くまでもないことだが聞いていた。何から話していいかわからなかったのだ。


ナナミは日本人だった。18歳。俺が召喚された時と同じ歳だ。突然連れてこられて、それでも頑張って店まで開いている。すごい事だと思う。


このマジックショップナナミで売ってる商品は百均限定らしい。

俺はあまり百均に行ったことがない。2回だけ行ったことはあるが買いたい商品がなかった。これはナナミには言えない。言ったら商品を売ってくれなくなる気がするからだ。


味噌汁まである。それに醤油も。百均バカにしてた自分を殴ってやりたい。百均万歳だ。ーーナナミはチートないですとか言ってるが十分チートだと思う。でも大丈夫かなぁ。こんなに儲かってるし強盗とか変な奴に目をつけられたりしたら大変だぞ。これは目を光らせておいたほうがいいな。俺の食生活はナナミにかかっているのだから......。

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