第35話 マジックショップナナミ1ー勇者side



俺は勇者タケル。3年前にここ世界に召喚されて魔王退治に付き合った。この世界に愛着もなかったし付き合う義理もなかったが、魔王倒したら日本へ帰還できると信じて戦った。結果は魔王退治はできたが帰還することは叶わなかった。ーーただひたすら日本へ帰ることが目的だった俺は、イルディア国(俺を召喚した国)の英雄になったが喜びはなく第三王女の婿にと望まれたがお断りした。だって第三王女ってまだ10歳なんだよ。こんなの受けたらロリコンだよ。褒美として土地をもらったが、そこは領主代理が上手く経営しているから俺の出番はなかった。時々転移を利用して書類にサインだけしに帰っている。

転移はとても便利な魔法だが1度行ったところのある場所ーーしかも印を残しておかなければ行くことができない。そんなわけで俺の旅はこの2年間徒歩と馬車を乗り継いで時に船に乗ってと結構大変だったのだ。決して転移を繰り返して楽していたわけではない。

まず初めは歴代の勇者たちが暮らしていた国から回っていった。きっと何か美味しいものが、日本で食べたようなものがあると信じて。結果はかんばしくなかった。似たようなものは存在したが同じでものではなかった。原材料が手に入らないのだから無理もない。2年間旅をしたが結局日本で食べたものと同じものは存在しないんだなと結論付けた。領地に帰って嫁でももらって暮らすか。そんなことを考えながら味の薄い野菜スープを飲んでいた時、前の席の男が野菜かけているものが視覚に入った。

あれは、あの入れ物はマヨネーズじゃないのか? マヨネーズを本体ごと持っている人がいることに驚いた。気づけばその男の腕を掴んでいた。


「何するんだよ。」


突然腕を掴まれた男はすごんでくる。だが俺はそんなことにかまってはいられない位動揺していた。


「これマヨネーズですよね。どこで手に入れたんですか?」


その時の俺は相当ピリピリしてたと思う。魔力が溢れ出ていたようにも思う。すごんでいた男は急におどおどしだした。


「ど、何処ってガーディナー公爵領のガイアって街だよ。ここから2日くらいかけて行く街さ。行く間に2つ村がある。欲しいなら早めに行ったほうがいい。すごく売れているから売り切れるんじゃないかな」


男に売ってくれと言ったが、ブルブル震えながらも売ってくれなかった。


「なんて名前の店なんだ?」


「マジックショップナナミだったと思う。まあ行けばわかるさ。人が並んでるからな」


ナナミ?日本でよく聞く名前だ。日本人なのか?

俺は夜遅かったがその日のうちに行くべきか悩んだ。だがどう急いでも徒歩じゃあ明日馬車に抜かれるだろう。朝まで興奮して全く眠れなかった。

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