第2話 朝食を食べよう



「さてと女神様に祈りも捧げたし、お腹が空いたから食べに行こうかな」


隣からも物音が聞こえてきたし、そろそろ朝食にいってもいいよね。鞄を横がけにして鍵を持つと部屋から出ることにした。

少し緊張する。どんな人たちと出会うんだろう。いきなり人間じゃないのに出会ったら、なんて挨拶したらいいのか。いやいや、見かけで判断したら駄目だ。人間以外の人?も立派な人なんだから。


「よし」


掛け声をかけて外に出たけど誰とも出会わなかった。ビクビクして損したよ。

どこで食べるかわからないから、受け付けにでも行くか。下に降りるとカウンターに若い女の人がいた。 良かった人間だ。

まだ獣人に話しかけるには勇気がいる。


「すみません。まだ朝食大丈夫ですか?」


「はい。9時まで大丈夫です。朝食は向かいのうさぎ亭で、ここの鍵を見せたら食べられます。そのまま出かけるときは鍵をここに戻しに来てください」


女の人は受付の上にある時計を指差して教えてくれた。日本の時計と同じで安心したけど、1日24時間であってるのかな。


「1日24時間なんですか?」


「そうですよ」


女の人は首を傾げながら答えてくれた。恥ずかしい。絶対変なこと聞く子だって思われたよ。でも仕方ないよね。本当にわからないんだから。


「お客様は昨日こられた方ですね。田舎だとまだ時計はない所もありますから気にしないでください。他にもわからないことがあったら、なんでも聞いてくださいね」


なんかとても優しい人だ。良かったいい人で。


「ありがとうございます。田舎から初めて出てきて、わからないことがたくさんあるのでよろしくお願いします」


丁寧に頭を下げると、


「小さいのに大変ね」


小さいってもう18歳なんだけど、まあいいか。誤解されてた方がいろいろ優しくしてくれそうだから黙っていよう。



うさぎ亭はたくさんの人で賑わっていた。いわゆる獣人もいた。耳と尻尾だけ出してる人も、全体的に獣人な人も。どうやって食べるのか見ていると器用にスプーンを握って食べていた。あんまりジロジロ見ていると失礼だろうと目をそらすとそこにも獣人がいるわけで、目のやり場に苦慮した。

鍵を持って立っていると兎の獣人らしい女の子の店員に話しかけられた。


「朝ご飯ですね。こちらの席にお座りください。パンは黒パンと白パンのどちらになさいますか?」


「えっと、白パンでお願いします」


よくわからないので白パンにしておいた。黒パンより柔らかそうな気がしたからだ。

しばらくするとスープとパンとサラダを運んできた。


「スープは暑いから気をつけてね」


どうやらここでも幼く見られてるようだ。


「いただきます」


思ったよりはまともな食事でホッとした。スープはピンク色で何のスープか気になったけど、飲んでもよくわからなかった。ポテトのスープに似てるけど濃厚さはなく、さっぱりとしてる。少し肌寒かったのがこのスープのおかげでポカポカしてきた。パンは思ったより柔らかく、噛めば噛むほど味がある。日本人の私としては物足りない。ジャムが欲しい。サラダはいろいろな野菜が入っているが、やっぱりドレッシングはなく素材の味を大切にしているという感じだ。


「やっぱり異世界って調味料があんまりないのかな。それともこの店だけ扱ってないのか」


これから暮らしていく上で、これは大事な情報だと思うからあとで受付のお姉さんに聞いてみよう。野菜は新鮮だからドレッシングがなくても美味しくいただけた。でもマヨネーズかけて食べたらもっと美味しいだろう。明日の朝はマヨネーズを持ってこよう。なんだかんだいいながらも全部いただいた。


「ごちそうさま」








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