第16話 猫の華

 これはMさんが知人から聞いた話だ。


 ある男が猫を拾って飼い始めた。

 男は相当可愛がっていたが男の恋人は酷く猫に嫉妬していた。

 男は恋人を虚ろにし猫を可愛がっている訳ではないのだが嫉妬深い女は猫でも男が自分以外に夢中になっている事が気に入らなかった。そして、女は猫を殺した。

 男が仕事で居ない間に合鍵で家に入り、寝ている猫を容赦なく切り殺し、庭に埋めた。まだ小さい猫を殺すことに女は罪悪感を感じなかった、只、邪魔者を消すと言う感情しかなかったのだ。

 愛猫が殺された事を知らない男は突然居なくなった事を落胆していたが女は男を慰めながらも邪魔者が居なくなった事を心の底から喜んでいた。

 それから暫くして女が男の家に行くと庭に一輪の花が咲いていた。花を見ていると男が「あの花、猫が居なくなって暫くして咲いたんだ」と話した。

 男は猫の代りに咲いた様に思えて毎日水やりをしているとも話した。女はそれを聞きながら花が咲いている場所が猫を埋めた場所ではないかと考えていた。その日はいつも通りに過ごしたが花が自分を見ているようで気持ち悪かった。その日以来、女が男の家に遊びに来るたびに花から視線を感じるようになり居心地の悪さを感じた。

 来るたびにいつもいつも視線を感じるようになった女は男に花を抜くように言ったが男は視線は感じないし只の普通の花だと女を宥めた、その態度に女は怒り庭に出て花を抜き土を掘り返し猫と思われる骨を掘り出し女は叫んだ。


『ほら、やっぱり私が殺した猫じゃない!!!!!!』


 その後、女は男と別れ、精神病院に入院したとも自殺したとも言われている。


 

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