第2話 猫が苦手な理由

 Oさんの職場の先輩は猫が苦手だ。大学時代に同棲していた彼女の飼い猫に酷い事をされたのだと言う。

 詳しい事を聞こうとしてもはぐらかされてばかりだったが、ある酒の席で酔っ払った先輩が自ら理由を話した。


 大学時代、先輩は彼女の友達で彼氏持ちの子と浮気していた。「×美(彼女の名前)の彼氏って本当に優しいね。貴方と付き合えば良かった・・・・・・」と彼氏の事で相談されたときに言われた言葉に舞い上がり、関係を持ってしまったそうだ。浮気相手もノリノリでお互いに恋人が居ながら関係を持つという事が刺激になってハマった上に恋人が浮気している事に気付かないのも手伝ってお互いに調子に乗った。

 調子に乗った先輩と浮気相手は先輩が住む部屋、彼女と同棲しているマンションの部屋で逢引することにした。その日は先輩の彼女はバイトで一日中家に居なかったので逢引するにはもってこいだった。


 逢引当日、彼女が出掛けるのを待っていた浮気相手を迎え入れ、早速、寝室へ!! の前に先輩は彼女の飼い猫をケージの中へと入れた。人懐っこい性格でベッドに寝ていると自分もと寝に来るからだ。寝ている猫をそっとケージに入れると先輩達は寝室に向かった。

 ベッドの上でお互いに裸になり事に及ぼうとしたときだ。


――カチャリ。


 寝室のドアが開く音が聞こえた。

 ハッキリと聞こえたその音に先輩と浮気相手は彼女が帰ってきたのかと思い蒼褪めさせながらドアの方を見ると隙間から覗く人影は居なかったが「ウー」と唸る声が聞こえた。恐る恐る唸り声が聞こえる方、下を見るとケージの中に入れたはずの猫が其処に居た。

 どうやって抜け出したんだ!? と疑問に思う前に猫が先輩達に向かって襲いかかってきた。「フギャアァァァァァァ!!」と鳴きながら襲いかかる猫に恐怖を感じ先輩と浮気相手は裸のまま寝室を出ると忘れ物を取りに帰ってきた彼女と鉢合わせしてしまったそうだ。

 その後、先輩と浮気相手はこの件で浮気が露見しお互いの恋人に別れを告げられ友人達からは遠巻きにされ寂しい大学生活を送った。


「俺に襲いかかってきた猫、あれは間違いなく元カノの飼い猫だった。だけど、服を着る為に寝室に戻ろうとした時にケージを見たら猫は居た。寝てたはずの猫は起きてた、そんで俺を見て『ざまぁみろ』と言わんばかりに鳴いたんだ。俺はそれ以来、猫が苦手だよ。きっと人間様には解らない何か力を持ってるに違いないからだ」


 そう力説すると先輩は残っていたビールを飲んだ。

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