怪猫~かいねこ~
うにどん
第1話 猫の街
猫好きのIさんの趣味は猫の写真を撮る事。そんなIさんは長期休暇を利用して「猫の街」と呼ばれる街へ写真を撮りに旅行に出掛けた。
その名の通り猫が至る所に居る街で猫好き仲間の間で最近話題になっている場所で、Iさんは話を聞いてからずっと行きたがっていた。街に付いた途端、猫だらけの光景を見てIさんは興奮しながら写真を撮っていた。意気揚々と写真を撮っているIさんに猫の餌を持って現れた地元の人が「旅行者かい?」と話しかけた。
「はい!! 噂通り、沢山の猫さんが居ますね。どうして、こんなに沢山居るんですか?」
「ああ、この街では昔から猫の殺生が禁じられているのさ」
そう言うと地元の人は餌の準備をしながらこの街に伝わる話を教えてくれた。
――昔。此処の地主の息子は大の猫嫌いで仲間と共に猫を捕まえては嬲り殺していた。
ある日の事、息子とその仲間達が行方知らずになった。父親である地主を始め、この辺りに住む者達で手分けして探したら彼らは無残な姿で見つかった。
彼らは食い殺された状態で見つかったという。
彼らの周りには猫が沢山居て、その猫達の腹は膨れ口周りは赤い何か――血で汚れていた、誰もが猫達がやったのだと確信できるほどだった。
父親は息子を食い殺した猫達を一匹残らず殺せと命じたが誰もが猫達を恐れて動けなかった。その様子を見た父親は更に憤慨し自ら殺そうとしたが急に倒れ、そのまま亡くなってしまった。
これを見た者達は猫を敵に回してはいけないとし、猫の殺生を禁じたという。
「それ以来、此処は猫にとって楽園になったという訳よ」
「悪い事はするなって言う教訓ですね」
Iは話を聞いて感じた事をそのまま言うと地元の人は笑って「だから、貴女も気を付けてね」と告げる。Iはその意図が割らず首をかしげた。
「猫好きでも無意識に猫にとって嫌な事をしちゃう事があるみたいなの。もし、無意識とはいえやってしまったら、その時は必死に謝りなさい。此処の猫達は賢いからすぐに許してくれるわ」
地元の人は餌の準備を終えるとさっさと帰ってしまった、残されたIは先ほどの意味が解らず、その場に立ち尽くしていたが背後からゾクリと視線を感じた。振り向くと「解ったなら悪い事はするな」と言わんばかりにその場に居た猫達がIをじっと見つめていた。
Iは初めて猫が怖いと思った。
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