第三話 小野塚領主 久保直義の幕にて
「
「おお、兼親。どうじゃ、あやつら動く気配はあるか?」
「いえ、稲荷を動けぬようでございます」
「動けぬ? いや動かぬのじゃ。こちらの動きを見ておるのよ。知恵者がおるな。ただの
「はっ」
「されど、社に通ずる四方の道は全て塞いである。そのまま囲みを狭めよ」
「ははっ!」
直義は
「社を
「はっ。必ずや!」
「二所どの。あの夜盗ども、我らが囲む前に
直義が、軍扇でぱんと膝を叩いた。
「うむ。ないとは言えぬな。あやつらの退路はそこしかないからの」
「いかがなされますか?」
「いかに儂らの兵が優れているとはいえ、禁所にまでは立ち入れぬ。じゃが禁を侵して彼の地に入り、戻ってきた者は誰一人おらぬ故、捨て置いて良かろう」
「御意!」
兼親の退出後、直義は思案顔を上げた。たかが夜盗の討伐を、ここまで物々しく執り行うのには訳がある。
「禁所、か」
直義は重々しく呟いた。
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